スーパー都市災害から生き残る
多くの現代日本人が巻き込まれる複合都市災害、必須として知るべき防災の知識が凝縮!

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概要・あらすじ
本書は、「スーパー都市災害」という、阪神・淡路大震災や、米国のハリケーンカトリーヌのように、大都市をきわめて大規模な災害が襲った際に発生する、複合的な大被害をもたらす災害を想定し、これからいかに逃れるかということをとりまとめております。
「スーパー都市災害」に定義付けされる、前述の阪神・淡路大震災、ハリケーンカトリーヌ、また2000年の東海豪雨や、2003年の博多豪雨など、これまでの大規模災害の具体的な事例。また実際には発生していないものの、愛知万博を地震が襲っていたら、第二次関東大震災が発生したら、といった想定など、具体的な話が多く盛り込まれています。
た防災手法についても細かく解説されており、電車乗車時に立つべき位置、東京で地震が起こった際にとるべき帰宅ルートなどの紹介や、木造住宅はのこぎり一本でバラバラにできるとか、細かな対策にも多くのページを割いており、読み応えのある一冊になっております。
感想・思ったこと
2000年に東海地方を襲った東海豪雨を紹介しているのですが、その中で「避難警告に従って逃げた人は、床上浸水で家財の多くをダメにした。逃げなかった人は家財を2階に上げて守った。逃げた人を陰で馬鹿にする声があったが、今回は運がよかっただけで、逃げた人こそが正しいということを伝えなければならない。」というコメントがありました。
また「自治体が避難準備情報(避難勧告の1歩手前)を出し、空振りに終わったとしても、それは被害が出なかったのだからよかったのではないか?」と、テレビ番組で著者の河田氏が述べた旨が紹介されていますが、前述のコメントとあわせ、私も全く同じ感想を抱きました。
都市部での災害は、人口が密集していることから、実際に被害が発生した場合にその規模はとてつもなく大きくなります。そういう意味で、特別に「スーパー都市災害」というカテゴリーを定義づけ、本書で紹介をしているのですが、都市部に人口が集中する日本のような国においては、きわめて重要な問題であると考えさせられます。
具体例が多く、対策事例もふんだんに盛り込まれ、また文章も分かりやすく記述されております。都市部に住んでいても、そうでなくても、ぜひ一読をオススメしたい一冊といえます。
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書籍の情報
著書名…スーパー都市災害から生き残る
著者…河田 惠昭
出版社…新潮社
初版発行日…2006/6/30
紹介文…「MARC」データベース
「首都直下地震」はもはや目前の危機になった。しかし、どんな大災害が来ても諦めるな! 危険を避ける帰宅ルート、備えておくべき必携品など、阪神・淡路大震災の現場を徹底調査した防災学者が伝授するサバイバル全戦略。
目次
- 第1部 「スーパー都市災害」は明日にも来る
- 第1章 「スーパー都市災害」とは何か?
- 1 阪神・淡路大震災とカトリーナ
- 2 災害をどう考えるか
- 3 関東大震災、ふたたび
- 4 東京は地震の都
- 5 災害に弱い首都
- 6 被害想定の基本
- 7 ハリケーン・カトリーナの被災現場で
- 8 現代の災害
- 9 地震予知の難しさ
- 10 カスケーディア地震帯の活動
- 11 いつ誰が災害に遭遇するか分からない
- 12 大災害に遭遇する確率
- 13 天災と人間
- 第2章 混沌都市に起こる悲劇
- 1 グラウンド・ゼロの教訓
- 2 ニューヨークはバイオテロ訓練1日前だった
- 3 アメリカ民主主義の強力さ
- 4 もし愛知万博に大地震が来ていたら…
- 5 東京という混沌
- 6 被害の中心はライフライン傷害
- 7 火災は、ビルは、道路は…
- 8 650万人の帰宅困難者
- 9 地域によって違う危険
- 10 犠牲者は避けられない
- 11 発展途上国の災害視察の意味
- 12 パプアニューギニアでみた災害の原点
- 13 21世紀の防災へ
- 第3章 都市防災戦略の現場から
- 1 首都減災
- 2 守るべきものは命だけではない
- 3 被災地に起こる情報過疎
- 4 首都を守るために
- 5 横行する違法開発
- 6 1千250億円の防波堤
- 7 高潮が起きる場所に家を建てれば
- 8 セーヌ河のハザードマップ
- 9 防災先進国・台湾
- 10 ライフライン確保の難しさ
- 11 ドイツ人の防災意識
- 12 事故は起こった後が大切
- 13 水の都ヴェニスは地盤沈下中
- 14 企業減災の現場
- 15 自助、共助、公助
- 第2部 大都市で生き残るための防災術
- 第1章 「スーパー都市災害」からどう避難するか
- 1 いざという時の心理
- 2 直後の避難行動
- 3 電車ではいつも安全な場所に
- 4 大都市の地下の危険
- 5 路上を走る自動車の中にいたら?
- 6 繁華街からどう避難するか
- 7 行動原理の基本
- 8 緊急時の連絡手段は?
- 9 伝言が難しい保育園
- 10 大災害時にはまず「共助」
- 11「一斉帰宅」の恐怖
- 12 首都防災の困難
- 第2章 日常防災の新常識
- 1 日常防災の基本
- 2 家具への配慮
- 3 枕元に何を置いて寝るか
- 4 ライフラインが断たれたら
- 5 都市の中の避難所
- 6 PTSDの怖さ
- 7 初めての集団ボランティア実践
- 8 死命を制するのは情報
- 9 三十六計逃げるにしかず
- 10 最新鋭の排水ポンプが仇になる
- 11 避難準備情報の問題
- 12 逃げる人、逃げない人の運不運
- 13 「小さな政府」の危険
- 14 JR博多駅に洪水が来ると
- 15 豪雨の定義は1時間50mm
- 16 津波災害の特徴
- 17 自治体の避難情報の信用度
- 18 正常化の偏見
- 19 イギリスで見た防災マナー
- 20 EUの知られざる効果
- 第3章 災害に強いまちづくりのために
- 1 高度成長下の開発思想
- 2 なぜ偽装マンションが生まれたのか
- 3 利益追求とモラル・ハザード
- 4 ビルをしゃぶしゃぶのコンクリートで建てると
- 5 発展途上国のホテルでは低層階に泊まる
- 6 「龍」の文字に気をつけよう
- 7 危険な地名
- 8 国際リゾート・バリ島の危機
- 9 熱帯マラリアは他人事ではない
- 10 死命を制した歌
- 11 援助外交の難しさ
- 12 地球温暖化の影響
- 13 命と財産どちらが重いか
- 14 被災後のマナー
- 15 防災文化の伝承