トイレが大変!
阪神・淡路大震災と新潟県中越大震災の教訓 災害時にトイレ権をどう保障するか
水や食料よりも、トイレの確保が重要だ。災害時における「トイレ権確保」を徹底追求!水や食料よりも、トイレの確保が重要だ。災害時における「トイレ権確保」を徹底追求!水や食料よりも、トイレの確保が重要だ。災害時における「トイレ権確保」を徹底追求!
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概要・あらすじ
「災害時におけるトイレ(排泄場所)の確保」に内容を絞り込んでいることが、本書のユニークな特徴であるといえます。災害時におけるトイレ確保の重要性、災害発生時の実情、トイレ確保の方法、また具体的な事前対策内容など、あらゆる角度から「災害時におけるトイレ(排泄場所)の確保」に関する話題を盛り込んでおります。
阪神・淡路大震災と新潟県中越地震発生時の、避難所における「トイレ(排泄場所)」確保の道筋、また避難所におけるトイレの様子を、不快感を覚えるほど(良い意味で)詳細にレポートしており、災害時に向けたトイレ対策の重要性を痛感させられます。
また、「災害時におけるトイレ(排泄場所)の確保」を総論で述べるのではなく、かなりカテゴリーを絞り込んで考察していることも、本書の特徴といえます。大震災発生時のシミュレーションを、震災シュミレーションとしてはなかなか珍しい幼稚園を舞台に行っており、震災発生時に教職員と園児がどうなるのか、また園児たちのトイレをどう確保するのか興味深い考察がなされていたり、オストメイトと呼ばれる方々の震災発生時の状況を追ったり、事前対策の意義を唱えるなど、鋭い視点でトイレ対策の重要性を語っております。
感想・思ったこと
人間、飲まず食わずでも3日間くらいならば死ぬことはありません。が、3日間排泄をしないことはあり得ないはずです。にもかかわらず、地震に備えた備蓄でまず思い浮かべるものといえば、水や食料などの「排泄の元」となるものばかりで、「出す先」について言及するケースはあまり多くないのではないでしょうか?
もちろん、水や食べ物は備えておかなければ手に入らず、一方トイレ(排泄場所)は、最悪の場合「その辺で」済ませることが出来ますので、備蓄に際しても上記のような優先順位になるのだと思いますが、あくまで「その辺で」トイレを済ませる行為は、「最悪の場合」です。
100万人が被災して、「その辺で」トイレを済ませ続けたら1週間後にはどうなるでしょうか?避難所になっている小学校の体育館裏で、300人が用を足し続けることが出来るでしょうか?物理的な衛生状態はもちろん、精神面を考慮しても絶対にあり得ない状況です。
個人、企業、行政、教育機関などあらゆる場所で、地震やその他の災害に向けた対策を練る際には、ぜひ一読をし、参考にしたい書籍といえます。
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書籍の情報
著書名…トイレが大変!
阪神・淡路大震災と新潟県中越大震災の教訓 災害時にトイレ権をどう保障するか
著者…山下 亨
出版社…近代消防社
初版発行日…2005/8/30
紹介文…「BOOK」データベース
本書は、災害時に避難所などでのトイレ混乱という点にのみ焦点を当て、災害時のトイレ権をどのようにして保障したらいいかについてとりまとめたものである。
目次
- 第1章 阪神・淡路大震災でのトイレ大混乱
- 1 神戸でトイレ混乱が始まった
- 2 原始的な排泄行為とトイレ権
- 3 神戸へのバキューム・トイレの緊急支援 -岐環協の支援活動-
- 4 仮設トイレ業者の緊急支援 -仮設トイレの無償搬入-
- 5 神戸市環境局の緊急トイレ対応
- 6 神戸市内の学校避難所でのトイレ混乱
- 7 神戸市内の避難所トイレ消毒作戦
- 8 家庭でのトイレと水騒動
- 9 神戸市内でのトイレ騒動の終焉
- 10 阪神地域(神戸市以外)でのトイレ対応
- 11 阪神・淡路大震災のもう一つの教訓
- 第2章 オストメイトたちの阪神・淡路大震災
- -災害時のトイレ困窮とその対応策の提言-
- 1 見えない障害者
- 2 阪神・淡路大震災、そのときオストメイトたちはどうしたか
- 3 そのときのためのオストメイト対策とは
- 4 オストメイトのトイレ権を保障するために
- 第3章 新潟県中越大震災と避難所のトイレ事情
- -阪神・淡路大震災の教訓は生きたか-
- 1 新潟県中越大震災での震害
- 2 住民の避難と避難生活
- 3 そのとき中越の首長(トップ)はどう動いたか -激震遭遇と初動-
- 4 トイレ権は保障されたか -避難所のトイレ事情の実際-
- 5 十日町市では消防団員が仮設トイレを清掃した
- 6 仮設トイレの夜間照明に新兵器が登場
- 7 学校避難所(川口町)に快適な仮設トイレが提供された
- 第4章 災害用トイレは進化したか
- -震災10年と災害時のトイレ対策-
- 1 阪神・淡路大震災でのトイレ・トラブルとその後の取り組み
- 2 新潟県中越大震災における避難所トイレの実情
- 3 指定避難所校の防災対策とトイレ
- 4 神戸市におけるトイレ対策
- 5 仮設トイレの現実
- 6 阪神・淡路大震災や新潟県中越大震災を教訓にした仮設トイレのあり方
- 7 今後の災害時トイレ対策
- 第5章 トイレ生活危機管理のポイント
- -そのときのトイレ権をどのようにして保障するか-
- 1 平素の公共トイレの危機管理 -災害トイレ主管課の対策-
- 2 被災地のトイレ応急復旧対応 -災害対策本部(司令塔)の緊急トイレ対応-
- 3 避難所でのトイレ生活対応 -避難所管理者の安全衛生管理-
- 第6章 保育園トイレ・シュミレーション
- -乳幼児たちのそのとき-
- トイレは避難生活の有様の中で
- そのとき保育園では
- トイレ行動弱者
- 子供は社会や国の宝-しかし、保育園は弱者の家
- 保育園の施設・職員と生活物資等の備蓄
- 幼児たちは一時飢餓状態に
- 幼児たちのトイレは大丈夫か
- 乳幼児お迎えルール
- 乳幼児たちの避難は容易か
- 最悪のシナリオ
- 実践的なトイレ訓練や避難訓練等はできているか
- 保育園が一時避難所になったら
- 「保育園防災の手引き」でのトイレ不安
- 第7章 災害トイレ元年のマンホールトイレ
- -マンホールトイレの効用と課題-
- 災害トイレ元年
- 本格的マンホールトイレの登場
- 大都市のマンホールトイレ第一号
- 都と千代田区のマンホールトイレ
- マンホールトイレは本当に使われるか
- マンホール鉄蓋の開閉不自由とトイレ不安
- 中山間地でも都市でも下水道道施設は脆弱だ
- マンホールは便槽と化す
- マンホールトイレは補完的なものとして
- 今後必須となるマンホール対策
- 第8章 阪神・淡路大震災以前の災害トイレ事情
- 1 関東大震災でのし尿処理問題
- 遺体の緊急処置
- し尿処置と清潔法の施行
- し尿処理設備の被害
- 東京市の応急対応
- 街頭便所の被災と仮便所の設営
- 警視庁の応急対応
- 教訓
- 2 戦後の自然災害とトイレ事情
- 南海地震
- 福井地震
- 三八豪雪
- 新潟地震
- 福井県奥越地方の大水害
- 宮城県沖地震
- 長崎大水害
- 島根県地方の水害
- 三宅島の火山噴火災害
- 長野県王滝村の地震被害
- 雲仙普賢岳の火山噴火災害
- 北海道南西沖地震
- 3 海外の災害トイレ事情
- アメリカ・ロマプリータ地震
- アメリカ・ノースリッジ地震
- トルコ・マルマラ大地震
- アルジェリア大地震
- インド洋大津波災害(スリランカ)