家庭防災5a:中期(数ヶ月)備蓄が必要な災害
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執筆者:高荷智也
短期備蓄が必要な状況は、強毒性の感染症パンデミック・経済危機によるハイパーインフレ・大規模な噴火災害などが生じた時です。ライフラインや流通網・輸入活動が完全に停止し、食品や物資の入手が長期にわたって行えなくなる状況に対して備蓄をします。
中期備蓄が必要な状況
流通網が発達した近代日本においては、「ちょっとやそっとの」災害で「餓死」をすることはありません。しかしその可能性がなくなったわけではなく、生じる災害や非常事態の内容や規模によっては、「餓え」に苦しむ可能性があります。このような、食糧を備蓄しなくては「飢え死に」する可能性がある災害に備えるのが、「中期備蓄」です。
中期備蓄が必要な状況としては、次のような事態が考えられます。
外出をすることができなくなる状況
強毒性の新型インフルエンザや致死率が高いウィルスの感染症パンデミックが生じた場合など、ウィルスの感染が高い確率で死に直結するような状況になった場合、外出を避けて人と会わないことが重要な感染防止の手段となります。このような状況下においては「買い物に行く」という生活行為そのものが命がけの行動になってしまうのです。
また実際にこのようなウィルスが蔓延した場合、危険を推して外出をしたとしても、食料品をはじめとする物資そのものが入手できなくなる可能性が高いと想定されます。外出ができないということは職場へも行けないということであり、あらゆる社会的活動が停止を余儀なくされてしまうためです。さらにパンデミック(世界的大流行)が生じている場合は輸入も停止してしまうため、物資不足に拍車がかかります。
海外からの輸入が停止する状況
日本及びその周辺地域で大規模なテロ・地域紛争が勃発し、日本への海路と空路の安全が確保できなくなった場合。あるいは日本で重大な経済危機が生じ、海外からの買い付けができなくなった場合。または政治的な問題が発生し、海外からの輸入が行えなくなった場合など、原因は様々ですが、輸入が停止した場合は食料の入手ができなくなります。
輸入が停止した際に、慌てて国内で食料品の増産を図ろうとしても短期的には不可能です。輸入ができないということは石油燃料も入ってこなくなりますので、農耕機械を動かすことができません。昔のように牛馬を労働力に使おうとしても、そもそも現代日本に農業用の牛馬はほとんどおらず、飼料の手配もできません。
また石油がなければ化学肥料の製造もできなくなります。これまた昔のように、人の糞尿を有機肥料に用いようとしても、発酵させなければ使うことができず、そのための場所も道具も、また非常時には時間もありません。また食料の生産ができたとしても、それを国内に配送するためのトラックを動かす燃料がそもそもないのです。
近代日本は海外からの輸入があることを前提に社会が成立しています。しかし、海外から日本へ物資が入ってくるという行為が、将来にもわたって保証されているわけではありません。海外からの輸入がなければ国内で生産できる食料だけで1億人以上の国民を食べさせることはできません。輸入が再開されるか、言葉は大変悪いですが大勢が餓死して食い扶持が減るのを待つしかないのです。
世界的な食糧危機が発生した場合
極端な気象現象により世界的に干ばつ・洪水・寒波などが発生し、世界同時凶作となった場合。世界のいずこかで大規模な火山の噴火が生じたり、隕石が落下したり、局地的な核戦争などが生じて、まき散らされた火山灰や粉塵で日光が遮られる「火山の冬」「核の冬」などの減少が生じ、農業生産が大きな打撃を受けた場合などは、全世界的に食糧危機が生じます。
極端な干ばつや洪水による農業への打撃は、現状すでに世界各国で生じていることで、これが同時に発生しないとは限りません。また火山の噴火による食糧危機は、直近では1783年6月のアイスランド・ラキ山の大噴火や、1815年4月のインドネシア・タンボラ山の大噴火で実際に生じた歴史があります。
また餓死者を出す状況にはいたりませんでしたが、1993年(平成5年)に日本国内で生じたいわりゅう「1993年・平成の米騒動」は記録的な米の不作が原因でしたが、この原因のひとつが1991年にフィリピン・ピナトゥボ火山の大噴火であると考えられています。このように現代においても、火山の噴火や気候減少により食糧危機が生じる可能性はあるのです。