命を守る「備えと防災」対策の進め方・7+1のポイント
最終更新日:
執筆者:高荷智也
個人と家庭の防災対策は「命を守る環境」を作ることが重要で、防災グッズをセットで買ってくればよいというものではありません。地震対策や防災備蓄など行いやすい対策、安全な土地探しや長期の食料備蓄などの難易度が高い対策まで、実施の流れを解説します。
1)安全な土地(安全な街)に住む
万人が行える対策ではありませんが絶大な効果を望めるのが、「そもそも安全な場所に住む」という防災対策です。日本の場合どこでも巨大地震に襲われる可能性がありますが、それでも埋め立て地を避ける、海沿いや河沿いの低地を避ける、崖や火山や原発の至近を避ける、大都市を避けるなど、地域内の危険な場所を避けることは十分に可能です。
もしこれから住居を決める、引っ越しの予定があるという場合は、家の「場所」をぜひ慎重に選んでください。すでに持ち家にお住まいの場合は、地域に生じる可能性がある災害のことをよく調べて、防災対策の優先順位や内容を検討してください。
2)建物と室内の地震対策
多くの方にとってはこの「地震対策」が、最初に取り組むべき「備え・防災対策」になります。なぜ地震なのかと言えば、日本の場合どこに住んでいても巨大地震に襲われる可能性があり、他の自然災害は事前に避難をする余地があるのに比べて、地震だけは必ず不意打ちで発生するため、事前準備の有無が生死に直結する可能性が高いためです。
具体的な実施内容としては、1)自宅を頑丈にすること、2)家具の固定やガラスの飛散防止対策を行うこと、3)寝室に停電対策グッズを用意しておくことの3点です。いずれも目的は、大地震が発生した際の強い揺れで「即死」をしない環境を作ることと、地震による二次災害から速やかに避難するための準備を行うことです。
3)走って避難するための準備
いわゆる「防災グッズのセット」を購入するという行為は、この「走って避難するための準備」に該当します。大地震後の津波、大雨による洪水や崖崩れ、火災、竜巻や落雷など、その場から移動しなければ命に危険を及ぼす災害から、素早く安全に避難をするための道具をまとめておきます。また自宅用だけではなく、学校や職場などの外出先用も必要です。
このときに用意をする防災グッズのセットは、1分1秒が生死を分けるような災害から文字通り走って逃げる際に持ち出す最小限のセットと、そこまで差し迫った危険はないがライフラインなどが停止している様な状況をやり過ごすための、インフラ代替セットに分けられます。また道具の準備だけではなく、避難先、家族との連絡方法などを定めておくことも重要です。
4)短期(数日~半月程度)の備蓄
近年いわれるようになった「3日分ではなく1週間分の備蓄をしましょう」という準備が、この「短期備蓄」に該当します。首都直下地震や南海トラフ巨大地震クラスの大震災、洪水や土砂災害による集落の孤立、富士山など火山の噴火による降灰(こうばい)や想定外の大雪による交通のマヒなど、短期的に国内の流通やインフラが停止する状況に備えます。
「2)地震対策」「3)避難の準備」「4)短期備蓄」の3点については必要となる可能性が高い対策であるため、理想的には全ての家庭で実施することが望ましい準備です。短期備蓄においては、まず水と食料とトイレ、そして日用品や医薬品、燃料や情報源など、ライフラインが停止した状態で最低限の生活物資を確保することが具体的な内容となります。
5)中期(数週間~数ヶ月)の備蓄
中期備蓄は、例えば強毒性の新型インフルエンザパンデミック、経済危機によるハイパーインフレ、テロや外部からの武力攻撃、大規模な火山の噴火、世界的な大凶作などが発生し、社会的混乱が生じることで、ライフラインや交通網・流通網・治安維持などに支障が生じた場合に必要なる防災対策です。いずれも過去に生じたことのある事態です。
中期の備蓄が必要となるような災害が発生した場合、準備の有無が自分と家族の生死を左右する可能性が高いため、重要な準備ではあります。しかしこの備蓄にはかなりの手間やコストがかかります。そこで、日常生活自体に備蓄的な要素を取り込み、ライフスタイルそのものを防災に強い様式に変化させる方法をおすすめします。
6)長期備蓄・自給自足体制を構築
長期備蓄と自給自足は、国家存亡の危機クラスの大災害に備えるもので、むろん万人が行える対策ではありません。対象リスクとしては、致死率がきわめて高いウィルスによるパンデミック、大規模な太陽フレア、最大規模の火山の噴火・隕石の落下・核戦争などによる気候変動などで、インフラや食料流通手段が破壊されるような状況が考えられます。
これらの災害の中にはフィクションの世界に留まるものもありますが、過去に発生したことがあるものも含まれますので、長期備蓄は防災マニアの趣味ではなく、実際に役立つ可能性がある備えです。誰にでも行える対策ではありませんが、中期備蓄の品目を徐々に増加させる形で、少しずつ実施していくとよいでしょう。
7)事故や病気に注意しながら生活をする
最後に何を言い出すのか?と思われるかもしれませんが、「命を守る」ための対策を考えるのであれば、自然災害に対する備えをするよりも、日々の生活習慣を見直して病気や交通事故に注意しながら生活をした方が、よほど長生きできる可能性があるのです。「あたりまえ」ですが、命を守るための防災に取り組むのであればぜひお考えください。
健康診断で毎回「肥満」にチェックがつく方は、非常食の準備よりもダイエットを実施すべきです。ライトを点灯せずに自転車に乗る方は、懐中電灯を非常持ち出し袋に入れる前に、その自転車の明かりを点けるべきです。喫煙者の方は新型インフルエンザに対してマスクを用意する前に、禁煙をした方が長生きできるでしょう。まずはここから、防災を始めましょう。
番外編)人類滅亡に備える
最後に番外編として人類滅亡クラスの災害に対する備えをご紹介します。想定ケースはむろん地球規模の災害で、過去に生じた可能性があると考えられるものとしては、巨大隕石や天体の衝突、超新星爆発や極大規模の太陽フレアによるガンマ線バースト、全球凍結(氷河作用の暴走)などが。可能性があるものとしては致死率100%のウィルスの蔓延などが考えられます。
この災害から個人の力で生き延びることは不可能で、国家レベル・人類レベルでの対応が必要になります。例えば巨大なシェルターを作って数百年単位で地下に潜るとか、火星をテラフォーミングして移住するなどです。そしてこれら最悪クラスの災害は決してフィクションではありません。人類は早く団結して、宇宙へ進出すべきと、切に願います。
-
家庭防災1:安全な土地(安全な街)に住む
抜本的な防災対策は災害が発生しない地域に住むことです。日本の場合地震は避けられませんが、他の災害は避けることができます。洪水や津波など居住地によって確実に避けられる災害、大地震の直撃を避けられる所など、安全な土地と地域の探し方を解説します。
-
家庭防災2:建物と室内の地震対策
万人が取り組む防災対策として最も重要なのが地震対策、必ず不意打ちで生じる地震は事前準備の有無が生死に直結するためです。頑丈な建物の選び方、室内の安全を確保する家具の固定方法、室内の移動を確保するための防災セット内容など、各論を解説します。
-
家庭防災3:走って避難するための準備
自然災害から命を守るために、時に走って逃げ出すための準備が必要ですが、この際には状況判断と荷物の作り方が重要になります。走って逃げなければならない状況について、非常持ち出し袋とインフラ代替セットの作り方、安否確認の方法などを解説します。
-
家庭防災4a:短期(数日~半月)備蓄が必要な災害
短期備蓄が必要な状況は、首都直下地震や南海トラフ地震などの大規模震災や、強毒性の新型インフルエンザパンデミック時です。ライフラインや流通網が寸断されて食料品などが短期的に入手できなくなるような場合や、外出が危険な状況に対して備蓄をします。
-
家庭防災4b:短期(数日~半月)備蓄の準備リスト
1~2週間を想定する短期備蓄では、非常用トイレ、飲料水と食料、調理用のカセットコンロやガス、情報収集手段などを準備します。非常持ち出し袋と比較して量が多くなってきますので、防災専用の備蓄ではなく、普段から使える物と兼用するとよいでしょう。
-
家庭防災5a:中期(数ヶ月)備蓄が必要な災害
短期備蓄が必要な状況は、強毒性の感染症パンデミック・経済危機によるハイパーインフレ・大規模な噴火災害などが生じた時です。ライフラインや流通網・輸入活動が完全に停止し、食品や物資の入手が長期にわたって行えなくなる状況に対して備蓄をします。
-
家庭防災5b:中期(数ヶ月)備蓄の準備リスト
数週間から半年~1年程度の籠城生活を前提にする中期備蓄では、飲料水と食料品、カセットガスボンベの備蓄が重要になります。普段から少しずつ消費できるものを中心に少しずつ量を増やしながら、最終的な目的量を備蓄できるように計画を進めましょう。