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災害時及び避難所におけるペット問題について

最終更新日:

執筆者:高荷智也

今や子供の数よりも、ペットの数の方が多い国であるペット大国日本は、同時に世界有数の自然災害大国でもあります。2014年時点で中学生以下の子供の人数は1633万人(※1)、これに対してイヌが1,087万頭・ネコが974万頭(※2)と、今や子供よりもペットと生活する家の方が標準的な暮らしであると言える状況です。

飼い主にとっては家族同然であるペットですが、一方で動物アレルギーを持っていたり、鳴き声や臭いを苦手とする方がいたりと、平時には対処できる問題が、災害時とりわけ避難所生活においては大きなトラブル要因になりかねません。災害発生後に慌てても手遅れとなりますので、ペット問題は事前に検討すべき重要な課題です。

  • (※1)平成26年5月4日総務省統計局調査(総務省)
  • (※2)平成25年度 全国犬・猫飼育実態調査(一般社団法人 ペットフード協会)

国はペットについてどう考えているのか

災害時のペットに関する国の方針は「飼い主とペットは一緒に避難するといいよ、でも避難所でどう生活するかは各自が考えてね」というスタンスで、ペットを守るべきという考えは示しながら、そのための具体策が法律で定められているわけではないという状況です。

災害時におけるペットの救護対策ガイドライン

災害時のペット対応については、過去の大規模災害でも繰り返し問題とされてきましたが、特に2011年の東日本大震災では重要な課題とされました。この際の反省や得られた知見を元にして、2013年(平成25年)に環境省が「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」を作成しました。

災害時のペット対策をまとめた、自治体・飼い主向け資料

このガイドラインでは、自治体などが独自の災害対策マニュアルや避難所設営のマニュアルなどを作成する際に、ペット対策を検討する際の参考資料となるよう、「災害時におけるペットの救護対策」がまとめられています。また同時に、ペットに対する飼い主の自覚や責任が重要であることを基本とし、自治体、地方獣医師会や民間団体・企業等の役割について記載されています。

原則は飼い主とペットの同行避難だが、同居ではない

またこのガイドラインでは、『災害発生時に、飼い主が飼育しているペットを同行し、避難場所まで安全に避難する』ことが原則とされていますが、同時に『同行避難は避難所での人とペットの同居を意味するものではない』とも記載しております。

なんと言いますか、「災害時の同行避難」という考え方が広まりつつあるのは良いことなのですが、用語のみが先行してる感も否めません。「ペットは災害弱者」であるという認識を持って、飼い主さんがきちんと準備をすることが絶対に必要なのです。

このガイドラインは法律ではなく方針、強制力はない

さらにこのガイドラインはあくまでも方針であり法律ではありません。このガイドラインにしたがって、「自治体がペットを救護しなければならない」「避難所で人とペットを同居させなければならない」というものではないのです。各論対策や判断は市区町村・避難所を設営する地域の自治会に委ねられているのが実情です。

災害時の避難所でペットはどう扱われるのか

避難所でペットがどう扱われるのかについては、各自治体・避難所を設営する地域住民に委ねられています。積極的にマニュアルなどを作成してペットを受け入れる前提で避難所の準備をしている地域もあれば、まったく白紙で検討にも上がっていない地域もあるという状況です。

判断は市区町村・自治会の自主性に任されている

例えば小中学校を避難所とする場合はスペースに比較的余裕がありますので、ペット専用エリアを用意したり、ペット同伴で入れる教室を確保したりということが可能です。地域による防災研修で避難所設営のシミュレーション演習を実施する際に、「ペットをどこに受け入れるか」を検討するような自治体もあります。

一方、小規模な公民館やコミュニティ施設などを避難所とする場合はスペースが限られるため、ペット同伴者が避難してきても室内にペットを連れていけなかったり、雨ざらしの場所へつながざるを得なかったり、という状況が発生する可能性もあり得ます。

大規模災害が発生すると行政の業務量がふくれあがる他、職員自身も被災者となるため人手が足りなくなります。このため避難所を開設する際にも、特に立上げ時には行政からの十分なサポートが期待できず、地域住民・自治会などが主導しての実施となります。

この場合、避難所運営チームがペットに対して好意的かどうかで受け入れ可否が決まる、ということもあり得るのです。ペットを家族同様に扱う方もいる一方、アレルギーなどがある場合は否定的になる方もおり、これはどちらが正解とも言えない状況です。

ではペットがいる家庭ではどうすればいいのか

このような状況であるため、例えば飼い主の方が「国はペット同伴を原則にしている!だから室内でペットと同居する権利がある!」などと声高らかにうたうことはできません。各地域・避難所毎に、人とペットとの棲み分けを考えなければならないのです。また特に飼い主は、自分のペットを守るための十分な対策を講じることが求められます。

このガイドラインには、飼い主向けの事前準備などをまとめた項目も多く記載されています。飼い主向けの抜粋版が配付されていますので、ペットを飼っている家庭が何をしておくべきかを知るため、ぜひ読んでおきましょう。

『災害時におけるペットの救護対策ガイドライン:一般飼い主編(抜粋版)』

まずは避難所へ行かなくてもよい準備をしておく

災害時にペットは弱者となります。つまりペットがいる家庭においては、高齢者・要介護者・妊婦・赤ちゃんなど、災害弱者になる家族がいるのと同じような準備が必要となります。最も有効な対策は、「そもそも避難所へ行かなくてもよい準備」です。自宅が無事で、二次災害の恐れがなく、十分な備蓄があれば、避難所へ行く必要はないのです。

ペット用の備蓄は常に準備しておく

避難所へ行く場合も、避難所でペットフードを入手するのは難しく、また毛布や水といった配布物も、基本的に人間の数しか用意されません。そのため、災害発生から流通網が回復するまでの期間、最低1週間~できれば2週間は完全に自給ができるよう、ペット用の水・食べ物・トイレ・衛生用品・その他お世話グッズを準備しておかねばなりません。

迷子対策にタグは必ず付けておく

さらにペットと離ればなれになってしまうと、ワンニャンは喋ることができないので探し出すことが容易ではありません。マイクロチップを入れてあっても、避難所にマイクロチップの読み取り機がなければ意味が無いため、名前や連絡先を記載したタグを付けておくことが重要です。

避難所へ連れて行く・生活をするためにケージにならしておく

小型犬や猫を避難所まで安全に連れて行ったり、避難所で生活をさせたりするためには、ケージやカゴにきちんと入れる様にしつけをしておく必要があります。そのため、普段からケージ内での生活に慣れさせたりケージでお出かけをさせるようにして、非常時にも違和感なく生活ができるようにすることが、ペットのためにもなります。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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