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Voicyそなえるらじお #1083 黒潮大蛇行終息で南海トラフ地震が生じる?根拠と過去の状況の話

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #1083 黒潮大蛇行終息で南海トラフ地震が生じる?根拠と過去の状況の話

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、5月13日(火)、本日も備えて参りましょう!

黒潮大蛇行

本日は「黒潮大蛇行と南海トラフ地震」のお話をしたいと思います。

黒潮の流れが大きく湾曲する「黒潮大蛇行」と呼ばれる現象が、7年9ヵ月ぶりに終息しそうだという情報が、2025年5月9日に気象庁より発表されました。黒潮大蛇行が終息すると、南海トラフ地震が発生しやすくなる、などの「ウワサ」も存在しており、本日はこのお話をしたいと思います。

黒潮大蛇行とは

日本列島の周りにはいくつかの海流が流れています。このうち、太平洋側に存在する大きな2つの海流が、南から北上する黒潮と、北から南下する親潮です。黒潮と親潮は房総半島沖合でぶつかり、その後は北大西洋海流となり東へ向かって流れていきます。

黒潮は、東シナ海を北上し、日本列島に沿って東に向かい、房総半島沖まで達する海流ですが、紀伊半島から伊豆半島沖を通るルートは、2つの種類があります。ひとつは、紀伊半島から伊勢湾沖、駿河湾沖を通って、伊豆半島沖までまっすぐ向かうルート。

もうひとつが、紀伊半島沖から南へ大きく蛇行し、駿河湾沖を大きく迂回して、伊豆諸島辺りで再び北上するルートです。まっすぐ向かうルートと比べて、わざわざ南へ大きく蛇行してすすむ迂回ルートとなり、これを「黒潮大蛇行」と呼んでいます。

直進ルートと、黒潮大蛇行ルートは、数年おきに入れ替わっており、直近の黒潮大蛇行は2017年8月に始まり、史上最長となる7年9ヵ月継続し、これが終息して直進ルートに戻りそうだという発表が、気象庁から先日報じられたという状況です。

黒潮大蛇行の影響

黒潮は、南から北上する海流ですので、暖かい海水を大量に移動させています。海水の温度はその周辺の気温や、雲の発達状況にも影響を与えるため、黒潮のルートは沿岸の気象に対して様々な影響を与えます。

一方でしばしば話題となるのが、黒潮大蛇行が終わると、南海トラフ地震が生じやすくなるというお話です。基本的に、大気の気象現象と、地面の地象現象は無関係ですので、黒潮がどうなろうと、大雨がどうなろうと、それは地震活動と関係ないはずなのですが、なぜこのような話が出てくるのでしょうか。

よく引用される研究として、地震前兆研究家・百瀬直也さんのお話があります。いわく、「黒潮大蛇行が発生すると、通常時よりも潮位が引き上げられます。ということはその分、海底のプレートにいつもより負荷がかかる。それにより、プレートの動きが抑制される状態になり、プレート変動による大型地震の発生率を軽減するわけです」というものです。

黒潮の幅は約100キロにもなりますが、実際黒潮周辺では潮位が上がっています。しかし、この程度でフィリピン海プレートの動きを止めるほどの力があるのか、私はド素人ですのでよく分からないのですが、そんなことがあってたまるかと思っています。この百瀬直也さんという方以外に、黒潮大蛇行によるプレートの抑制について語る研究者は存在しておりませんが、そういうことなのではないかなと、個人的には思っています。

黒潮大蛇行と過去の南海トラフ地震

また、黒潮の直線ルート・大蛇行ルートの時期については、1965年以降に気象庁が詳しい統計をまとめていますが、それ以前の状況については、岡田正美さんという方の研究でまとめられており、これによりますと

1934年3月1日頃から1944年前半まで、黒潮大蛇行が生じていたそうなのですが、前回の昭和の南海トラフ地震は1944年12月と、1946年12月に発生していますので、たまたまという言い方になりますが、黒潮大蛇行が終息した後に南海トラフ地震が生じたというパターンが当てはまっています。これも、黒潮大蛇行の終息が、南海トラフ地震を招きやすくなるという話の、裏付けのひとつになっているようです。

一方、前々回の南海トラフ地震は、1854年12月に生じた安政東海地震と安政南海地震ですが、ちょうどこの直前となる1853年7月と1854年2月には、アメリカからペリーの黒船が来訪しており、黒潮大蛇行が生じているという観測記録が残されているそうです。

この黒潮大蛇行が、1854年の年末まで続いていたのだとしたら、南海トラフ地震を抑制する効果とは無関係だという話になりますし、一方ペリー来訪直後に黒潮大蛇行が収まっていたのだとしたら、むしろ黒潮大蛇行の終息直後は南海トラフ地震の発生に注意という話の裏付けのひとつになりますので、どちらとも言えないところです。

ただ、個人的な感想で言えば、海流の動き程度でプレートの動きが抑制されるとは思えませんし、まして南海トラフ地震に影響するというのはふざけた話だ、というように思っています。私は研究者ではありませんのでこれは個人の感想です。結局のところ、前回の放送と同じ結論になりますが、大地震へは常に備える、黒潮が気になる人は、これをきっかけに防災をしたらいいんじゃないですか、という結論になります。

本日も、ご安全に!

本日は「黒潮大蛇行と南海トラフ地震」のお話でした。

それでは皆さま、引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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