Voicyそなえるらじお #1055 南海トラフ巨大地震・被害想定見直し…個人がすべきことは?
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、4月2日(水)、本日も備えて参りましょう!
常に備える
本日のテーマは「南海トラフ地震の被害想定」です。
2025年3月31日、内閣府から南海トラフ地震に関する最新の被害想定が発表されました。前回の資料は2012年及び2013年版でしたので、12年ぶりの見直しとなります。今回はこの資料をどう捉えるべきかというお話です。
常に備えよう
まず結論から言えば、南海トラフ地震に対する、個人と家庭の防災の方向性は何ら代わる物はありません。
- 津波が到達しない場所に住むこと
- できれば耐震等級3、最低でも新耐震基準の家に住むこと
- ライフライン停止に備えて防災備蓄をすること
防災の半分は家で決まる、という状況は12年前も今も同じです。常に備えるという意識で、まずは即死を避けること、その後の生活の維持をすること、これが引き続き重要です。
変更点
今回の被害想定で代わったところはなんでしょうか。ニュース報道などでは、まず想定死亡者数がそれほど減っていないことに言及されています。
12年前の被害想定では、想定される死者が最大で32万3千人、今回の被害想定では29万8千人ということで、この12年間の対策により減少する死者は8%、あまり差が無いですねと報道されています。
ただ、例えば津波の被害想定については、ハザードマップの見直しにより、津波の浸水想定範囲が3割増えています。この場合津波による死者は3割増加していてもおかしくありませんが、実際には約7%の減少ということで、この点においては東日本大震災後に進められた、津波避難対策が一定の効果を発揮していると言えそうです。
一方、今回の被害想定見直しで追加された要素として、災害関連死による死者や被害の様相が追加された点があげられます。全体の死者想定数とは別枠の計算となっていますが、最大で5万2千人の災害関連死が想定されている点は、直近の災害の知見が反映されている点と言えます。
今回の被害想定で具体的に想定されている死因と人数は、最悪のケースで
- 家屋倒壊による死者…67,700人
- 家具転倒などによる死者…5,300人
- 津波による死者…215,000人
- がけ崩れによる死者…600人
- 地震火災による死者…8,700人
- ブロック塀や屋外落下物による死者…20人
- 合計で最大298,000人の死者想定となっています
この中には、大地震による自動車や鉄道の事故や、都市部における徒歩帰宅時の群集雪崩による被害などは含まれていませんので、状況によってはこうした数値が追加される可能性があります。
状況により代わる
この死者の想定は、最悪のケースです。最悪というのは、真冬の深夜に南海トラフ地震が発生した場合のことで、つまり全員寝ている時間帯に巨大地震が発生し、ベットや布団が家具に潰されたり、逃げる間もなく真夜中の大津波に巻きこまれたりという状況が想定されています。
逆に、真夏の日中に大地震が発生した場合は、仕事や学校などで外出をしている方が多い想定になりますので、建物倒壊・津波・火災等による死者は減少し、逆に屋外の落下物などによる死者が増えると想定されています。この場合の想定死者数は最大で217,000人です。
今回の被害想定見直しでは、津波からの避難意識を高めることで死者を減らせるという報道がなされていますが、真夜中の大地震では意識が高くても低くてもみんな寝ています。この場合に有効なのは意識を高めることではなく、津波が来ない場所に引越しをすることや、自宅を飛び出す準備をせめて万端にすることです。
その意味では、被害想定の見直しに関わりなく、行うべき対策は中長期的な居住地選びと建物の耐震化が最重要であることに変化はないのです。南海トラフ地震はいつ発生するか分かりません。30年以内に80%程度と言われていますが、この数字も本当にそうかどうかは地震がおこるまで分かりません。
大地震への備えは「常に備える」、そして居住地と建物で半分は決まる、ということを改めて認識して、自分だけではなく世代を超えた対策を行うことが重要だと、お考えください。
本日も、ご安全に!
本日は「南海トラフ地震の被害想定」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!