Voicyそなえるらじお #1062 なりたい職業1位を米農家に…稲作の復権と国家備蓄による防災
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、4月11日(金)、本日も備えて参りましょう!
いつまでもあると思うな親とコメ
本日のテーマは「食料備蓄」のお話です。
昨日の放送では、210年前にインドネシアのタンボラ山・超巨大噴火により生じた、火山の冬現象と地球規模での寒冷化のお話をいたしました。今回は続きのお話ということで、食料危機とお米のお話をいたします。
食料危機はそこにある危機
昨日お話をした超巨大噴火による火山の冬現象と、これによる寒冷化が招く食料危機は、本当にいつでも生じる可能性があります。2022年に出版をした書籍、「今日から始める本気の食料備蓄」では、食料危機を招く可能性がある現象として、4つのシチュエーションを紹介しています。
- 局地的紛争による輸出入の停止、また核戦争による核の冬現象による寒冷化
- 太陽フレアなどが引き起こすコロナ質量放出現象で生じる、地球規模の停電
- 超巨大噴火による火山の冬現象
- 強毒性の感染症パンデミックで生じる、世界的な食料生産・物流の停止
こうした現象は、いつでも生じる可能性があり、そして世界的な食料危機を招く可能性があります。このような事態に対応する準備として、家庭で行う食料備蓄のノウハウをまとめたのが「今日から始める本気の食料備蓄」でした。
ただ、個々人で行える備蓄には限界があります。防災に関心がなければせいぜい1週間、趣味が防災の方でも1ヶ月分以上の食糧を備蓄することはなかなか大変です。私もライフワークとして食料備蓄に取り組んでいますが、例えばワンシーズン・1年間満足に食料入手ができなくなるとしたら、これに対応するのは難しいと思っています。
大地震や水害など、瞬間的に生じる災害への備えは、家庭の防災がとても大切です。一方で食料危機のように、数ヶ月から数年間にわたり継続する危機に対しては、個人で行える対策にも限界があります。食料やエネルギーの安定供給は、安全保障の一環として行うべき国の役割なのです。
人類の歴史は食料増産と奪い合いの歴史
日本の主食は米と言われます。昭和40年頃の日本では、摂取カロリーの45%程度をお米でまかなっていましたので、確かにコメは主食でした。ところが令和時代になると、コメから摂取するカロリーの割合は平均2割弱、残りの8割はお米以外からカロリーを得ています。
具体的には、畜産物、油脂類、小麦からカロリーの半分を摂取しています。昭和40年頃と比較すると、お米からえるカロリーが半分になり、肉・油・小麦から得るカロリーが倍になっています。これは食生活の変化という意味で、必ずしも悪い話ではありませんが、問題は大部分を輸入に頼っていることです。
お米の自給率は100%ですが、畜産物は16%、油脂類は3%、小麦は15%しか自給できていません。海外からの輸入が止まった瞬間、主要なカロリー減が全てなくなってしまうのです。
仮の話ですが、1日に必要なカロリー約2100kcalを、全てお米で接種するとしたらどのくらいのお米が必要でしょうか。計算をしますと、1日に4合、1ヶ月で19キロ、1年で231キロのお米が必要になります。もし日本国民1.2億人がコメだけで生きていくとしたら、1年間に必要なお米の量は2,772万トンです。
昨年令和6年のお米の生産量は734万トンでした。これは日本に必要なカロリーの26%分に相当します。一方、米の生産のピークは、1967年(昭和42年)の1,425万トンです。ざっくり現在の倍ですが、必要カロリーの半分を占めていたお米を、きちんと国内で生産することができていたのです。
これ以降、食生活の変化によりお米の消費量が減り、それに合わせる形でお米の生産は減り続けています。直近では、お米の凶作などが生じていないにもかかわらず、お米の値段が1年で2倍になるという異常な事態が生じていますが、日本の稲作と食料供給はあきらかに異常な状況になっています。
米を作ろう
今、多くの田んぼは住宅地になったり、放棄されたり、あるいはメガソーラーの用地に転用されています。田んぼは、稲の生産だけではなく、多くの役割を持っています。洪水や土砂災害の防止、河川の水質改善や地下水位の安定化、気温の上昇防止、特に水回りに関して大きな役割を果たしています。
資源のない日本が唯一膨大に保有する資源が「水」です。水が無尽蔵に得られる地域はそう多くありませんが、温暖化による気温の上昇は干ばつを招きやすくなり、水を豊富に持つことは大きな競争力の源泉になるとも考えられます。これに寄与しているのが日本全国に存在する田んぼ、のはずなのです。
明治以前の日本では、お米の生産力こそが地域の力でした。すなわち石高です。実際、明治初期の日本の人口は、新潟県が1位でした。また加賀百万石と言われるように、北陸地方の人口も多かったわけですが、これはとにかくお米の生産量が多かったことに他なりません。
昭和40年当時の技術でも、1400万トンのお米を作れるだけのポテンシャルが日本にはあります。都市化などにより田んぼの面積は減っていますが、令和の最新技術を活用すれば、従来なみ、あるいはより多くのお米を作ることができるのではないでしょうか。
日本はお金を持っていますので、世界中から食料やエネルギーを購入することができています。これもお米の生産量・消費量が減った原因と言えます。しかし、ある日生じる超巨大噴火で、太陽フレアで、感染症パンデミックで、あるいは周辺有事が発生し、輸入が止まる状況になったらどうなるのでしょうか。
日本の穀物の多くは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ブラジルなどの友好国から輸入しています。しかし昨今のアメリカによる関税戦争の状況を見るに、はたしてアメリカで穀物が大凶作となったさい、日本への輸出を維持してくれるでしょうか、激しく疑問であり不安です。人は食料を得るためであればなんでもします、どんなひどいことでも行います、そうした状況に日本が巻きこまれた場合、私達は生きていくことができるのでしょうか。
お米を作る
平時には土地の限界まで食料を作り、国内で消費しきれない分は輸出する。生産量が減れば輸出をとめて国内に回す。多くの国が当たり前として行っていることです。日本はどうでしょうか、真逆のことをしています。本来らは限界までお米を生産するべきだと思っています。お米の国内消費、海外輸出、バイオエタノールの製造、いろいろな用途にお米を活用すべきです。
もちろん、国内消費量以上にお米の生産を行えば、お米の価格が暴落し、農業として成立しなくなります。そのためお米の生産にはある程度の税金が投入されてもよいと思います。若者がなりたい職業の第1位がお米農家、嫁ぎたい男性の職業ナンバーワンがお米農家、稲作系Youtuberがもてはやされる、良いではありませんか。
多少の利権が生まれても、代々のお米農家が一番の勝ち組になっても、私はそれでよいと思っています。それほど米作りは、日本で優遇されるべき産業です。
そして、安全保障の一環としてお米の国家備蓄を行います。直近では、備蓄米の放出などが行われていますが、国が管理している備蓄米は100万トン程度です。これは日本人の必要カロリーの3%程度にすぎません。ちなみにこのために使われている予算は478億円だそうです。
食料危機対策としては、お米の備蓄量をドカンと増やすべきと思います。カロリー消費量の半分をお米でまかなうとして、これを最低1年分。収穫直前の段階で1400万トンほどのお米の備蓄があれば、世界的な食料危機が生じてもワンシーズンは日本全体で生きのびることができるようになります。
現在の14倍、予算で言えば6,692億円分、すさまじい金額ですが、必要な金額ではないでしょうか。1人当たりなら年間5500円です。国の予算で最大の項目は医療費で46兆円ほどが使われています。医療費の1.5%程度をお米の備蓄に回せばこれが達成できます。過剰な医療を1.5%減らして食料危機の恐れを無くす、どうでしょうか。
どんなにひどい食料危機が生じても、全国民に毎月10キロのお米を1年間は支給します。4人家族なら毎月40キロのお米が支給されます。災害発生がお米の収穫直後の時期なら2年間はお米が支給されます。心強くはないでしょうか。そういう日本に私は暮らしたいです。
本日も、ご安全に!
本日は「食料備蓄」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!