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Voicyそなえるらじお #1025 防災視点の原子力発電所…維持か廃止かに関する考えについて

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #1025 防災視点の原子力発電所…維持か廃止かに関する考えについて

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、2月10日(月)、本日も備えて参りましょう!

原発はどうなった

本日のテーマは「原子力発電」のお話です。

先週末にかけまして、全国で強烈な寒波に襲われ、日本海側を中心に都市部でも大雪となる地域が相次ぎました。今週に入り、強烈な寒波は収まり、春一番が吹く可能性もあると報道されています。

ところで強烈な寒波と言えば、今シーズンの冬は、電力の需給ひっ迫や、節電の要請に関する話をあまり聞かなかったと思います。これは、2024年の秋段階で、冬の電力供給・需要についての分析を行い、電力需給に余裕があると判断されたため、節電要請などは行わないことが事前に決められていたためです。

その電力、ベース電力を供給しているのが原子力発電所ですが、本日は原発の状況と個人的なスタンスについてのお話です。

現在の状況について

2011年の東日本大震災…福島第一原子力発電所事故が発生する前、日本には54基の原発、厳密に言うと原子炉が存在し、国内で使う電力の約30%をまかなっていました。これは世界に存在する原発の約1割に相当する規模で、原発大国であったのが当時の日本の状況でした。

しかし、福島第一原子力発電所事故の影響を受け、原子力発電所を取り巻く環境、私達が持つ意識は大きく変わりました。震災直後から、被災地以外を含む原発の点検・停止が徐々に行われ、東日本大震災の翌年、2012年5月には国内の原発全てが停止し、原子力発電所が稼働し始めて以来42年ぶりに原発ゼロの状況となったのです。

その後、2013年に原発に関する新たな基準、新規制基準が作られ、全国の原発はこの新しい安全基準に照らし合わせた設備の整備や検査などが行われ、この新基準に適合し、かつ地元の自治体から再稼働に関する合意を得られた原発から徐々に再稼働が進められています。

2025年の2月現在では…

  • 東北電力の女川原発2号基
  • 関西電力の美浜原発3号基、大飯原発の3号基と4号基、高浜原発の1・2・3・4号基
  • 中国電力の島根原発2号基
  • 四国電力の伊方原発3号基
  • 九州電力の玄海原発3号基と4号基、川内原発の1号基と2号基
  • 合計14基が再稼働をしています。

また、新基準に適合し再稼働の許可が完了している原発として、東京電力の柏崎刈羽原発の6号基と7号基、日本原子力発電の東海第二原子力発電所が、再稼働の準備を行っている段階です。その他の原子力発電所でも、再稼働に向けた安全工事や審査などが行われており、全国で少しずつ、安全性に配慮を行った上ですが再稼働が進められている状況です。

原発はいるのかいらないのか

さて、この原子力発電所ですが、再稼働をさせるべき・させないべき、両方の意見があります。ここでは、私個人がどう考えているのかについてお話をします。

まず、今後50年から100年という長期スパンで見た場合においては、現在の原子力発電所は緩やかに廃止をしていく必要があるだろうと思っています。これは、現在の原発が抱える大きな問題点、高レベル放射性廃棄物の安全かつ確実な処理方法が確立されていないこと、またどれだけ安全対策を施しても事故が生じる可能性をゼロにすることはできず、そして大事故が発生した際に大きな影響をもたらすことが理由です。

原子力発電所の燃料に、現在主流の「ウランやプルトニウム」などを使用する限り、使用済みの放射性物質の処理問題。あるいは事故が生じた際に、放射性物質が拡散されることによる放射能汚染の問題。現代の科学ではまだ解決のできない課題です。放射性物質を安全に処理する技術が確立されない限り、現在の「ウランやプルトニウムによる核分裂反応」による原発を、永遠に維持することはできないと私個人的には考えております。

では、わずかにでもリスクがあるならば、原発は廃止すべきでしょうか。原発を完全に廃止する場合は、原発に変わる発電所が必要となります。原子力発電に変わる高出力の熱源として、現在使用することのできるものは、化石燃料を用いた火力発電が唯一となります。

しかし、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料は有限です。さらに二酸化炭素の排出による地球温暖化、これによる気候変動、大雨の増加、台風や大雪の極端化、またこれらによる潜在的な食料危機リスクの高まりといった問題も加速度的に大きくなっています。原発のリスクと、気候変動リスク、どちらがより深刻かという点においては、正直答えが見えません。

エネルギー自給の問題

日本は、化石燃料を自給することができません。そのため、毎日海外から石油・石炭・天然ガスを大量に輸入しなければ1日たりとも現在の生活を維持することができません。これは書籍「今日から始める本気の食料備蓄」、およびその動画シリーズでも解説していますが、海外からの輸入が何かの理由で停止した際、あっという間に干上がるという問題も抱えています。

原発はこのような、海外リスクに強いというメリットがあります。厳密には、日本国内での核燃料再処理サイクル施設が全て稼働すれば、という注釈付きとなりますが、海外からの輸入が完全に止まる状況となっても、年単位で電力供給ができるというのは強みです。かつて原発は、純国産エネルギーと言われていましたが、この状況は現在も変わりありません。

最近は、太陽光発電を中心に自然エネルギーの導入もさかんです。しかし、ソーラーパネルが電力を供給できるのはとうぜん晴れた日中に限られますので、発電所を無くすことはできません。また、住宅や建物の屋根にはどんどんソーラーパネルを乗せて、日中の電力を自給自足すべきですが、山や森を削って作る、メガソーラーはダメだと思っています。

住宅や建物の屋根に乗せる太陽光発電は分散型の自然エネルギーとして有効ですが、日本で現在開発されているメガソーラーの多くは、森林や山を破壊し、土砂災害や洪水と言った新たなリスクを生み出す原因になりつつあるからです。砂漠など使われていない土地に建てるのはよいと思いますが、森林を切り開いて太陽光パネルを並べるのはないと思います。

そのため、海外からの輸入が止まるような状況への備えとしては、原発を維持することが現在も有効で、これを決定的に補える代替手段はまだ存在していません。

海外の原発の存在

短期的には原発を残した方がよい、と考えるもうひとつの理由は、地球はひとつという問題です。日本だけが現在の「核分裂型の原子炉」を廃止しても、お隣の韓国や中国には数多くの原発が存在しています。そして、これらが事故を起こした場合、放射能汚染の被害を大きく受けるのは、風向きや海流的に日本となります。

この時、放射能汚染に対する各種の対応を日本も行う必要があります。しかし、日本から原発がなくなれば、原子力産業および、これに従事する多くの技術者・エンジニア、関連する機材や資材などは失われていきます。この状態で海外にある原発が事故を起こし、日本に影響をもたらした場合、これに対処するすべが失われてしまうのです。

そのため、国境を越えて影響をもたらす原発を廃止するのは、世界同時でなければならないだろうとというのが、今日本から原発を無くすべきではないと考える理由のひとつです。とはいえ、これは短期的な話です。原発が抱えている高レベル放射性廃棄物の処理問題が解決されない限りは、次の発電手段を求める必要があり、そのひとつが核融合だろうと思っています。

現在の原発で用いられる核分裂も、未来の原発で用いられるであろう核融合も、同じ原子核反応によりエネルギーを取り出す技術です。と言うことで個人的には、長期的には核融合の実用化を目指しつつ、その先進国となるべく技術投資を行い、そして既存の核分裂による原子力発電については緩やかに維持・縮小し、核融合との入替を目指す、という方向が私個人的な原発に対するスタンスとなります。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「原子力発電」でございました。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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