Voicyそなえるらじお #925 短時間停電にも警戒!ブラックアウト回避で生じる計画・計画停電
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、9月6日(金)、本日も備えて参りましょう!
突発的な計画停電
本日のテーマは「北海道胆振東部地震と計画停電」のお話です。
本日9月6日は、北海道胆振東部地震が発生した日です。
ちょうど6年前の本日、2018年(平成30年)9月6日、早朝3時7分、北海道の胆振(いぶり)地方を震源とする、深さ37キロ、マグニチュード6.7の大きな地震が発生しました。平成30年北海道胆振東部地震の発生です。この地震で、北海道厚真町(あつまちょう)で震度7の揺れ、安平町(あびらちょう)、むかわ町で震度6強の強い揺れを観測しました。
この強い揺れに襲われた結果、多くの土砂災害などが発生し、死者44名、負傷者785名、建物の全壊が462棟、半壊が1,570棟などの被害が発生しております。改めてまして、犠牲となった方々のご冥福をお祈りいたします。
平成30年北海道胆振東部地震
2018年は、4月には鳥取県西部で最大震度5強を観測する大きな地震が、6月にも大阪で、大阪府北部地震が発生して被害が出ていました。さらに、平成最後の年に平成最悪の被害を生じさせた西日本豪雨や、全国の広い地域に被害をもたらした台風21号・台風24号など、多くの災害に見舞われた1年となり、2018年の今年の漢字にも「災」が選ばれるなど、自然災害に見舞われた1年となりました。
北海道胆振東部地震は、そんな中で発生した大地震だった訳ですが、幸いにして地震の規模がマグニチュード7を超えていなかったこと、深い場所で生じたことから、強い揺れを観測した範囲は比較的狭い範囲となりました。また、地震による死者の多くは土砂災害により生じた被害であり、他の地震で多い建物倒壊による被害は地震の規模の割には限定的でした。
これは、北海道の住宅が雪や寒さ対策のため、もともと頑丈に作られているという特徴があるためで、同じ年の大阪府北部地震と比較しても、建物の被害率は低い値となっています。頑丈な建物に住むことで大地震の被害を減らせる、という基本を、ある意味では証明した大地震となりました。
ブラックアウトによる停電被害
北海道胆振東部地震で特徴的だった被害は、なんといっても全道停電・ブラックアウトです。過去の大地震などでも、被災地が停電に見舞われるということはよく生じていましたし、首都直下地震や南海トラフ地震においても、地震による停電対策が重要であるとされています。しかし北海道胆振東部地震の場合は、被災地だけでなく、地震による直接的な被害がなかった地域を含む、広域停電となったことが特徴となりました。
災害による停電は、電柱や変電所などの送電設備が物理的に破壊されるパターンと、発電所が停止することで生じるパターンの二つがあります。3.11…2011年の東日本大震災の際は、被災地では送電施設が津波で破壊されたために停電が生じ、一方原子力発電所の多くが停止したことから、直接的な被災地ではなかった首都圏でも電力不足となり、計画停電などが行われたことは、記憶に残っていると思います。
北海道胆振東部地震では、この両方のパターンが発生したことになりますが、これだけの範囲を巻きこむ広域停電が、地震をきっかけに発生したことは始めてであり、今後に向けて多くの教訓を残すことになりました。そしてこの大停電、ブラックアウトを再発させないための取り組みが行われました。それが「周波数低下リレー」です。
周波数低下リレー
日本の電力は、東西で周波数が異なります。西日本は60ヘルツ、東日本は50ヘルツの電力が、日々発電所で作られて供給されています。ところで、電力はたくさんためておくことができず、需要に合わせて発電する量を調整する必要があるのですが、需要が増えすぎると周波数が下がり、供給が増えすぎると周波数が上がるという性質があります。
周波数が、60ヘルツ・50ヘルツから変化しすぎると、電気製品に大きな影響を与えるため、つねに需要と供給のバランスを取って、規定の周波数で電力供給をしなければならないのです。
このとき、大地震などが発生してどこかの発電所がダウンすると、電力の供給量が瞬間的に減少して、全体の周波数が低下してしまいます。この状況では他の無事だった発電機にも安定に運転することができなくなり、発電機が連鎖的に停止してしまい、大規模停電、ブラックアウトに到ることがあります。これが2018年の北海道胆振東部地震で生じた、全道停電・ブラックアウトの状況です。
このブラックアウトを防ぐために、他の地域から緊急に電力を融通して供給を増やすなどの取り組みも準備されていますが、それでも不足する場合には、需要を減らすしかありません。そこで行われる対策が、UFR(Under Frequency Relay)周波数低下リレーです。
周波数低下リレーは、発電機の保護や電力系統の安定化のために、周波数の低下を検知して、自動的に発電設備や一部の需要を、全体の電力系統から切り離す装置のことです。大地震などでどこかの発電所がダウンして、ブラックアウトの恐れが生じた場合、瞬間的に大規模な計画停電を発生させて、電力網全体がダウンすることを防ぐようになっています。
この周波数低下リレーは、2021年2月13日に発生した福島県沖の強い地震や、2022年3月16日に発生した宮城・福島での強い地震の際にも動作し、直接強い揺れを感じていなかった地域についても、ブラックアウトを回避するための計画停電が自動的に発生しました。
ということで、大地震などが発生した際には、電力網全体を守るために、予告なしの計画停電が広範囲で行われることが今後もあります。この停電は計画的なモノですので、供給側の体制が整えばすぐに解除されます。数時間程度の停電に巻きこまれることを想定した準備も、停電対策として必要になります。
本日も、ご安全に!
本日は「北海道胆振東部地震と計画停電」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!