Voicyそなえるらじお #936 御嶽山噴火から10年…難しい小規模噴火の察知と個人の噴火対策
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、9月27日(金)、本日も備えて参りましょう!
噴火から10年目
本日のテーマは「御嶽山の噴火」のお話です。
本日2024年9月27日は、2014年に発生した御嶽山(おんたけさん)の噴火からちょうど10年を迎える日です。戦後最悪の火山災害となったこの噴火を振り返りつつ、防災について考えたいと思います。
御嶽山について
まずは御嶽山(おんたけさん)の紹介です。御嶽山は、長野県木曽町と岐阜県下呂市の県境に位置する、標高3,067mの火山です。日本の山の中では14番目に標高が高く、火山の中では富士山に次いで2番目の高さの山です。また標高3,000mを超える山の中では日本国内で最も西にあります。
日本国内には、「御嶽山」という名前の山が数多くありますが、その中で最も標高の高い山が、この御嶽山です。区別をする際には、木曽御嶽山などとも呼ばれます。御嶽山は古くから山岳信仰の対象の山として親しまれてきた火山で、日本百名山のひとつでもあります。
御嶽山は、直近2万年ほど噴火をした形跡のない、いわゆる「死火山」と思われていました。しかし1979年(昭和54年)に水蒸気爆発を起こし、当時は「死火山が噴火した」と報道されて話題になったのですが、この噴火をきっかけにして、日本国内における火山の分類そのものが見直されることになりました。
2024年現在、世界には約1,500の活火山があり、そのうち111の活火山は日本列島に存在します。1979年の御嶽山噴火以前は、山を「活火山」「休火山」「死火山」の3つに分類していましたが、現在は「活火山」と「活火山以外」という分類に変わっています。火山が1万年単位で活動を止めるのはよくあることで、活火山は活火山であるという定義に改められたということです。
そして1979年の噴火以降、小規模な噴火が度々生じていましたが、その中で生じたのが2014年9月27日に発生した噴火でした。
2014年の御嶽山噴火
2014年(平成26年)9月27日、お昼前の11時52分、御嶽山の山頂付近で突然噴火が発生しました。この噴火に巻きこまれた登山者や観光客58名が死亡、5名が行方不明となり、日本における戦後最悪の噴火災害となりました。
御嶽山の噴火は厳密に言うと水蒸気噴火で、過去に被害の生じた噴火と比較すると比較的小規模な噴火でした。御嶽山の噴火以前に、犠牲者の数が最も多かった戦後の噴火としては、1991年(平成3年)に発生した雲仙岳の噴火で43名が犠牲となった火砕流による被害が上げられますが、2014年の御嶽山噴火を1991年の雲仙岳噴火の規模を比較すると、400分の1程度になるそうです。
御嶽山の噴火による犠牲者が多かったのは、噴火が発生した火口周辺に、多くの登山者がいて、至近距離で噴火に巻きこまれた方が非常に多かったことが原因です。9月末という登山に適した時期で、週末の土曜日、天気も良く、噴火した時間帯もお昼前後ということで、ちょうど山頂付近に人が集まっていたタイミングでの噴火でした。
犠牲となられた方の死因の多くは、頭上からの噴石の直撃を受けての即死、あるいは身動きが取れなくなった状況で高温の火山灰やガスに巻きこまれることによる窒息死であったことが分かっています。火砕流も発生しまたが、これは登山道から離れた場所へ影響をもたらしたため、死者の大半は噴石による被害でした。
噴火の時期が登山シーズン以外であれば、あるいは登山者のいない夜中であれば、平日や雨が降っているなどコンディションが悪ければ、犠牲者はゼロになっていた可能性もあります。噴火の規模という言い方では小規模でしたが、それでも人を死なせるには十分過ぎる規模の噴火であり、あらためて活火山に登山するということはリスクのあるレジャーであるということを、認識すべき噴火であったと言えます。
噴火防災
御嶽山の噴火による被害を、事前対策で減らすことはできたのでしょうか。日本の火山には、噴火警戒レベルという指標があります。平時の状態を示すレベル1から噴火による危険を知らせるレベル5までの5段階に分かれている指標ですが、御嶽山が噴火を起こした際の噴火警戒レベルは平時を示す「1」でした。
御嶽山の噴火警戒レベルを引き上げる目安として、噴火の前兆現象のひとつである「火山性微動」という地震が1日に50回観測されること、というものありました。噴火の17日前と16日前に、火山性微動が50回以上観測されていたのですが、その他の異常現象はなかったため、噴火警戒レベルの引き上げはされていませんでした。
後から思えば、この火山性微動は噴火の前兆だったわけですが、これは後付けです。噴火前の段階ではなんとも微妙なラインであり、噴火前に登山者へ危険を知らせることは難しかったと言えます。
また、噴火が発生した火口周辺には、噴火から身を守るシェルターや待避壕などがなく、逃げ込める場所がなかったことも被害を大きくした原因となりました。これは事前対策ができたことであり、この噴火以降御嶽山をはじめいくつかの火山では、待避壕などが設けられることになりました。
個人の対策
登山をする際には、落石や噴火による影響に備えてヘルメットの着用などが推奨されていますが、御嶽山の噴火による犠牲者の多くは、ヘルメットでは防げない大きさの噴石の直撃を受けたと考えられており、ヘルメットや各種装備を着用していても犠牲者を大きく減らせたとは言い切れません。
一方、防災的に重要なのが避難開始のスピードです。御嶽山の噴火では、噴火と同時に噴煙が立ち上り、この噴煙には大きな火山弾がたくさん含まれていました。そして噴火から数分後に上空へ打ち上げられた火山弾が時速数百キロで地上に落下し、これの直撃を受けて多くの方が犠牲になったと考えられています。
そして、亡くなられた方が所持していたカメラの多くに、噴火の様子が収められていたことが分かっています。噴火を察知した瞬間に、噴煙の方向から少しでも離れる事が出来ていれば、建物や岩陰に身を隠すことができていれば、犠牲者が減っていた可能性があります。
近年、多くの災害や事故現場でその様子がスマホ撮影されていますが、危険を察知したらとにかく1秒でも早くその場から離れる。御嶽山噴火の場合も、これが生死を分ける境になっていた可能性が高く、ぜひ知っておいて頂きたい対策となります。
私自身も毎年火山である富士登山をしますが、富士山も活火山でありいつ噴火してもおかしくありません。そうしたリスクを理解し、装備を調え、入山届を出してから山を楽しむ、ということが重要です。
噴火から10年目を迎える本日、改めて犠牲となられた方々の、ご冥福をお祈りいたします。
本日も、ご安全に!
本日は「2014年の御嶽山噴火」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!