Voicyそなえるらじお #935 激甚化する水害…個人と国で必要な「短期・中期・長期」の対策
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、9月26日(木)、本日も備えて参りましょう!
続く災害
本日のテーマは「水害対策」のお話です。
前回の放送では、能登半島における大規模な水害のお話をいたしました。また本日9月26日は、1954年の洞爺丸台風、1958年の狩野川台風、1959年の伊勢湾台風と、歴史に残る被害をもたらした3つの台風が上陸した日でもあります。
ということで本日は、少し広い水害対策のお話です。
止まらない大雨
温暖化による海水温度の上昇により、近年では大雨の規模・発生頻度ともに増加傾向にあります。さらに台風についてもより勢力の強い台風が日本まで到達する可能性が高まり、大雨・高潮・暴風などの被害が大きくなると想定されています。
梅雨のシトシト雨、夏の夕方の夕立、台風一過による秋晴れ、かつては綺麗な自然現象でもありましたが、昨今は梅雨の線状降水帯、夏の夕方のゲリラ雷雨、スーパー台風による破壊的な被害と、美しさのカケラもない恐ろしい現象に変わっています。
温暖化が止まることは考えづらいため、水害リスクは今後ますます高くなると想定されています。そのため、今目の前で必要な短期の水害対策と、将来に対して必要な中長期的な抜本対策を同時に進めていかなければなりません。
短期的な水害対策
短期的な水害対策としては、引越と避難です。個々人においては引越や住宅購入の機会がある際に、沈んだり崩れたりしない場所に住む。これで台風や大雨による浸水や土砂災害の大部分を無視できるようになります。
引越が難しい場合は素早い避難の準備と意識が重要です。ハザードマップを確認して周辺の影響と避難先を把握すること。すばやい避難を行える様に非常持ち出し袋などを準備すること。そして何より、自治体から避難情報が発表されたら毎回避難を実施することが重要です。
避難に時間がかかるならば警戒レベル3・高齢者等避難が出たら行動開始、その他の家庭も警戒レベル4・避難指示で行動開始。ちなみに警戒レベル5・緊急安全確保は屋外避難をすると死ぬかもしれないので避難を諦めてくださいという合図なので、警戒レベル5を待ってはいけません。きちんと避難をすれば水害による被害のほとんどは無くすことができます。
とはいえ、毎回避難するのは大変です。この場合には避難しなくてよい場所か、マンションの沈まない高さの部屋に住むしかありませんが、引越も難しい。でも避難も面倒くさい、分かります。この場合はせめて大雨の際に気象庁の「キキクル」を見て下さい。自分がいる場所の、現時点の危険度をピンポイントで把握できます。
街全体の避難指示はなんとなく他人事と考えても、キキクルで自分の家のエリアが警戒レベル4・避難指示相当の色になっていたら逃げる、などを行っていただきたいと思います。
中期的な水害対策
中期的には安全な場所への引越の促進や、ハザードマップの充実化が必要です。
自分はもう住宅ローンがあるので引越は無理。という方は多いと思いますが、これから引越の機会がある若い人達に対しては、ハザードマップを見て土地や建物を選ぶことを教え、当たり前にしていく必要があります。
また金銭的なサポートも必要ですので、例えばハザードマップ上のリスクに応じて、固定資産税の優遇、住宅ローンの金利優遇や、火災保険・地震保険による建物と家財、自動車の車両保険などの金額を優遇する、といった対応が必要ではないかと思います。かなり思い切った優遇策で、安全な場所に住むと金銭的にもすごくお得になる、というレベルで対応ができないものかと考えます。
危険な場所に住んでいる人が損をする仕組みではなく、危険ではない場所に住む人が大きく得をする仕組みを、短期的ではなく数世代掛けて整備する必要があるかと思います。
そしてこの時に重要なのがハザードマップのさらなる充実化です。例えば洪水ハザードマップは中小規模の河川について整備が間に合っていませんが、こうしたものを整備していく。また内水氾濫などまだハザードマップが整備途中のものも充実化させる。さらにこうしたハザードマップを、国交省の重ねるハザードマップなどで見やすくする。現在も行われている対策ですが、中期的にはもっと進める必要があるかと思います。
しかし、現実問題として、ハザードマップで色がつかない場所は限られますので、全ての人がいますぐ安全な場所に引越をすることは物理的に不可能です。そのため長期的には、安全な場所を増やすという取り組みも必要です。
長期的な水害対策
長期的な水害対策は、日本における国作り・街作りのあり方の見直しです。100年後に人口が半数以下となることがほぼ確定している日本では、現在の街や国をそのまま維持することはできません。これはネガティブに捉えられることもありますが、逆に言えば土地や建物がどんどん余って行きますので、整理整頓のチャンスとも言えます。
100年前の日本と現在の日本では、道路も鉄道もインフラも大きな違いがあります。100年の時間をかければ、街を作り直すこともできます。市町村や都道府県を越えたレベルで、100年後の日本人をどこに住まわせるのか、産業や農業をどう維持したいのか、この時代に必要な教育をどうするべきか、これを考えて今から修正をすることが重要ではないでしょうか。
戸建ての建物は沈まない場所に作り、津波や洪水の影響を受けるエリアにはマンションを中心とした住居を設けたり、農地や浸水に対応できる施設を設ける。究極的にはこの形が望ましいのですが、今すぐにには無理です。でも100年、200年後だったらどうでしょうか。短期・中期の対策とあわせて、将来へ向けた見直しも重要ではないかと思います。
こうした議論や対策は個々人で行えるものではなく、都道府県レベル、国レベルでの対応となります。こうした100年先の日本の青写真を描くための法律を作り、組織を整備することが、求められるのではないかと思います。災害対応や防災対策をとりまとめる組織として「防災省」の設置を求める声もありますが、これとあわせて「国土再開発省」必要ではないでしょうか。
本日も、ご安全に!
本日は「水害対策」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!