Voicyそなえるらじお #928 防煙フードやタオル…火災避難グッズの効果は?役立てるには?
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、9月12日(木)、本日も備えて参りましょう!
最善の行動を取って、最後にお守り「も」つかう
本日のテーマは「火災避難」のお話です。
今回は、Voicyの差し入れ機能で頂いたご質問から、火災避難に関するお話です。Voicyで花束の差し入れをくださいましたのは「shu1」さんです。ご質問は「救煙くん」という商品について。
防煙フードなど
建物火災が発生した際に命を守る行動として、最も大切なことは、素早く逃げることです。火災報知器の非常ベルが鳴った、なにか煙臭さを感じた、まだ誰も避難行動を取っていない段階で、自分自身が第一避難者となって外へ飛び出すことができれば、助かることができます。
非常ベルなどがなっても、たぶん訓練じゃないかな、みんなが避難を始めたら逃げよう、そう考える方が多いと思いますが、これは貴重な避難の時間を消費することになり最悪です。まず逃げる、何もなければ戻ってくる、本当に火災なら大成功、誤報だったとしても訓練が成功して大成功、こういう気持ちが重要です。
ところで、火災から避難をする際の防災アイテムにはいくつか種類があります。ご質問をいただいた「救煙くん」は、呼吸による二酸化炭素を除去し、酸素を発生することで呼吸を助ける道具。ホテルなどにも設置されている「防煙フード」という透明な袋は、中に空気をためて頭から被ることで、走って逃げる際の空気を確保する道具。また袋を開封すると湿らせたタオルが出てくるような、長期備蓄濡らしたタオルなどもあります。
こうした道具は役立つのかどうか、を考える前にまず重要なことは、火災避難グッズはお守りであり、まずは率先避難が何よりも重要だということです。本気の火災による前が見えないレベルの白煙・黒煙の中を逃げようとする場合は、消防士さんが装着している酸素ボンベ付きのフルフェイスヘルメットと耐火服を着なければ、ダメです。それ以外の装備は基本的にお守り以上の効果はないと考えることが重要です。
「救煙くん」は
使用したことがないので、ホームページに記載されている説明書きからの評価になりますが、この製品は小銭サイズの酸素発生装置が装着されている救命タオルで、タオルを口と鼻に当て、内側には酸素が生成されるので15分間にわたって煙の中でも逃げられるアイテムと記載されています。
使ったことがない、この情報だけを見ての私の感想ですが、ないよりはあった方がよいが、これに頼って避難はしたくないというのが感想です。問題は、火災避難時に最大の問題となる、一酸化炭素に対する対応がないことです。酸素が発生する、それは良いのですが、100%の酸素だけを吸うと人は死んでしまうため、2割の酸素と8割の窒素による「空気」を確保することが重要です。
この製品は呼吸による二酸化炭素を除去して、酸素を供給できるアイテムということですが、外気を完全に遮断することはできないため、一酸化炭素が充満している状況では、おそらく即死するのではないかと思います。もちろん未体験の感想ですので、実際にはすごい能力で呼吸が出来るのかもしれませんが、私だったらこれに命はあずけたくありません。
もうひとつの問題は、タオルで鼻と口をカバーできたとしても、目を覆うことはできないため、煙が濃くなると目が染みて開けていられなくなる可能性が高いことです。これは、長期保存濡れタオルにもまったく同じことが言えます。そのため、基本は煙がうすい間に走って逃げる、その時に「救煙くん」を持っていれば避難の可能性を高めるためにお守りとして使う、この使い方ならよいと思います。お助けグッズがあるから、避難は遅れても良い、と考えてはならないということです。
防煙フードは
では、防煙フードはどうでしょうか。防煙フードは、簡単に言えば透明な大きいゴミ袋です。火災避難をする際に、まだ煙が到達していない場所で袋を取り出して、中に空気をためて、それをあたまにすっぽり被り、首元を片手で押さえて中の空気が抜けないようにして、走って避難するために使います。ホテルの部屋のドアなどに設置されていることもありますが、実は私も防煙フードはつねに持ち歩いています。
防煙フードの良いところは、顔全体を袋で覆いますので、一酸化炭素などの影響を受けづらいことです。もちろん呼吸のたびに袋の中の酸素濃度は減っていきますので、有効な時間は数分程度です。この時間を活用して素早く建物外に逃げるために使います。もちろん、この袋があるから避難はおくれてもよいということではなく、やはり基本は素早く逃げる、その時にお守りとして袋も被る、という方法がベストです。
ちなみに、防煙フードはたんなる袋ですので、火災の炎や火の粉をあびると一瞬で溶けます。が、そうした高温の状況はほとんど手遅れであり、防煙フードなどを使う場面ではありません。まだ煙が薄い、炎が見えない、そうした状況でつかうのが避難グッズの役割になります。
ということで、各種の火災避難グッズは、ないよりはあった方がよいが、基本は率先避難が大原則、すばやく逃げることが最重要。その時に10秒で取り出して使えるなら避難グッズも使うのがよいが、どこにしまったか分からなくてごそごそ探すくらいなら、何も使わずに避難を優先することが重要です。タオルを濡らすなども同じことが言えます。
本日も、ご安全に!
本日は「火災避難」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!