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Voicyそなえるらじお #957 蓄光素材を防災で使う際のコツ、夜光・蛍光・反射の使い分けは?

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #957 蓄光素材を防災で使う際のコツ、夜光・蛍光・反射の使い分けは?

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、10月30日(水)、本日も備えて参りましょう!

地下鉄や地下街に便利

本日のテーマは「蓄光素材と防災」のお話です。

今回はコメント欄に頂いたご質問への回答、質問をくださいましたのは「きみえ」さん。

我が家では、子供がやれスマホの充電だ、ゲームの充電だ、扇風機だと勝手にコンセントを抜いて(しかも元に戻さない)しまうので、コンセント型の停電時自動点灯ライト以外に乾電池型の地震時点灯ライトも併用しています。
あと、夜中にトイレに起きた時のためにトイレまでの動線に蓄光シールを貼っていますが、この蓄光シールは防災目線でも活用できるものでしょうか?ライトとの併用が大前提ですが、上手な活用方法があれば教えてください。

蓄光と夜光

まずは基本のおさらいと言うことで、光り物について整理をしましょう。光り物といってもお寿司やお魚ではありません。ピカピカ素材の種類としては、蓄光、夜光、蛍光、反射などが存在します。

今回のご質問で頂いたのは、明るい場所で光りを蓄え、暗くなると光りを放出する「蓄光」素材です。素材自体が光るため、暗闇で使用することができます。一方、蓄光と同じように使われる素材が「夜光」です。夜光素材は微量の放射性物質を含ませることで、光りを蓄えなくても光り続けるという性質を持っています。

初期の夜光素材には放射性物質のラジウムが使われていましたが、人体への健康被害があったため使われなくなりました。その後は人体にも安全なトリチウムが使用されましたが寿命が短くやはり使われなくなりました。現在では、日本のメーカー根本特殊化学が開発し発売されている、ルミノーバという安全な素材が使われています。

ルミノーバには放射性物質が含まれませんので、単体では光らず、光を蓄えて光る物質です。そのため現在では、自分で光る「夜光」素材はなくなり、言葉の上のみで「夜光」素材と「蓄光」素材がほぼ同じ意味合いで使われています。

蛍光と反射

「蛍光」素材は、光をあてると瞬時に別の波長の光りとして再放出をする素材です。特に紫外線を吸収しやすく、蛍光素材に目に見えない紫外線を当てると、瞬時に目に見える可視光として光りを放出するため、より鮮やかな色に見えます。身近なもので言えば、蛍光灯はまさにこの蛍光素材を使った照明器具ですし、洗濯物をより白く見せる蛍光洗剤などにも使われます。

また塗料に混ぜた蛍光塗料も多く使われていて、文房具なら蛍光ペン、また駅の黄色い線、道路のライン、緊急車両の車体など、太陽光が当たる場所で、よりその存在を際立てたい場合に蛍光塗料が使われます。カラオケやさんなどで、ブラックライトを点けると隠された模様が光り出す壁などもありますが、あれも蛍光塗料が使われています。

もうひとつ、反射素材ですが、これは光りが当たった時に光って見える性質を持っている物質です。そういう意味では蛍光と反射は似ていますが、蛍光はそれ自体が光るためどこから見ても鮮やかに見えますが、反射は光を当てた方向に光を返すため、光の方向からしか明るくは見えません。

また、反射材は昼間も光を反射しますが、そもそも周囲があかるいと目立ちづらいため、基本的には夜間の自動車のヘッドライトや、懐中電灯などに対応させる形で、道路標識や自転車などの反射板、また身につける持ち物などに反射材が使われます。

ということで長々とお話しましたが、

  • 屋外や明るい場所でものを鮮やかに見せるなら「蛍光」素材
  • 暗い場所で光を受けた際にモノを強調したいなら「反射」素材
  • 暗い場所で光がなくてもモノを強調したいなら「蓄光」または「夜光」素材

使う、ということを知っておいてください。

蓄光の活用について

では、その蓄光についての詳細です。「蓄光」とは名前の通り「光りを蓄えて光る」という能力を意味します。この能力を備えている素材が蓄光素材、この能力を備えているテープなら蓄光テープということになります。

物質というものは、内部にエネルギーをため込むと、それを放出して安定した状態に戻ろうとする性質を持っています。例えば太陽光の下に水なり石なり餃子なりシマエナガなりを放置すると温まり、これを室内に持ち込めば熱を放出しながら室温まで下がっていきますが、これは余分なエネルギーを熱の形で放出していることになります。

一方、蓄光素材を太陽光の下に放置したあと、室内に持ち込むと、余分なエネルギーを熱ではなく光りで放出します。これが蓄光素材の特徴です。多くの蓄光素材は、紫外線をよく吸収して光りますので、紫外線が多く含まれる場所で光を蓄えるのが効果的です。

紫外線を多く含む光の代表は太陽光です。そのため、蓄光素材は普段太陽光に当たる場所に置いておくと、夜間に最も強く光ります。ただ、紫外線は多くのプラスチック製品を劣化させてしまうため、蓄光素材は元気になりますが、蓄光以外の素材がボロボロになりやすく、室内に設置する蓄光素材にがんがん太陽光を当てるのは難しいのも現状です。

また、最近の窓ガラスの多くはUVカット、紫外線をカットするようになっています。そのため日当たりのよい場所に蓄光素材を置いておいても、直射日光と比較するとチャージに時間がかかるということもあり得ます。

また、照明器具の中では、蛍光灯が最も紫外線を含むため、普段蛍光灯を使用している室内に蓄光テープなどを貼っておくと、夜間や突発停電時によく光ります。一方、白熱電球とLEDは紫外線の量がすくないため、蓄光素材を光らせるためには長時間光に当て続ける必要があります。先日もお話しましたが蛍光灯はまもなく全廃されるため、蓄光素材を室内で使う場合には、その空間の照明器具についてすこし注意する必要があります。

LEDライトの場合は、白色LEDの方が蓄光素材を光らせやすく、暖色系のLEDは光が弱くなります。室内で停電対策として蓄光素材を使う場合、太陽光が差し込まず、さらに暖色系のLEDしかついていない空間、トイレや廊下に蓄光テープなどを貼っても、あまり光らないかもしれません。

一方、普段から自然光が入る場所や、白色LEDを強めに使っている場所の場合は、夜間や突発停電時に蓄光がよく光ります。停電時の目印として蓄光テープなどを貼ることは有効ですが、その空間の照明や明かりの状態によっては、思ったよりも光らないということがありますので、その場合は停電時自動点灯ライトなどを使った方がよいです。

本日も、ご安全に!

本日は「蓄光素材と防災」のお話でした。

それでは皆さま、引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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