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Voicyそなえるらじお #956 気づいた時には手遅れの恐ろしさ…ソウル梨泰院・群集雪崩から2年

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #956 気づいた時には手遅れの恐ろしさ…ソウル梨泰院・群集雪崩から2年

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、10月29日(火)、本日も備えて参りましょう!

日本でも生じる

本日のテーマは「梨泰院・群集雪崩」のお話です。

本日10月29日は、2022年に韓国・ソウルの繁華街、梨泰院(イテウォン)で発生した群集雪崩による事故から2年目を迎える日です。ハロウィンの時期に生じた惨劇、若い方ばかり159名が命を落とされたこの事故について改めて振り返りたいと思います。

梨泰院・群集雪崩事故

韓国の首都ソウルにある繁華街、梨泰院(イテウォン)で発生した雑踏事故は、狭い領域に人が集中しすぎることで生じる「群集雪崩」により生じた事故でした。

2022年10月29日土曜日の夜、ソウル市内の繁華街である梨泰院では、路上でハロウィンパーティーが行われていました。新型コロナウイルスによる行動制限が3年ぶりに解除されたハロウィンの週末ということもあり、普段よりも多くの人出があったということです。

事故の現場となったのは、繁華街・梨泰院にある、幅3.2メートル・長さ40メートルの、急な狭い坂道でした。この狭い路地に数千人の人が集中し、坂を登る人・下る人が集まりすぎ、進むことも戻ることもできない状態となりました。

そして深夜22時過ぎ、坂の上の方から、人々が次々と転倒し、押され、逃げることも避けることもできなくなった、坂の中腹辺りにいた300名ほどが折り重なるように潰れ、多数が呼吸困難状態となり、大量の圧死者が発生したと想定されています。

結果、日本人2名を含む159名が命を落とす大惨事となりました。通常の自然災害であれば死者の多くは高齢者に集中しますが、事故現場周辺には若い方が多くいたということもあり、死者の大多数が10代・20代・30代の若い方、とりわけ犠牲者の7割が20代の若者に集中したということは、大変痛ましいことでありました。

改めて、犠牲となられた方々のご冥福をお祈りいたします。

恐ろしい群集雪崩

群衆雪崩の恐ろしさは、それが発生するまで、自分自身が事故に巻きこまれつつあることに気づきづらいという点にあります。

例えば、狭い室内などの閉鎖空間に人が寿司詰めになる場合は、そこが危険な状況になる可能性を察知できますので、回避行動を取ることができます。しかし屋外の「その辺の路上」で群集雪崩が生じる場合、人が多いなと言うことは感じても、このあと大事故が生じるというイメージはなかなか抱けないものです。

ただ歩いていただけなのに、気がつくと身動きが取れなくなっており、これは危ないと思ってそこから立ち去ろうにも、すでに自分の意思では行動不能となり、そして誰かの転倒やパニックの発生を引き金に、群衆雪崩に発生してしまうという流れになります。リスクを察知しづらく、察知できても回避が難しいというのが群集雪崩の問題です。

毎日通勤・通学・買い物などで出かけているその辺の屋外、少し細い路地や通路はないでしょうか。そしてある日突然、イベントや災害でそこに人が多く集まり、普段通りに通行しているつもりが、気づいた時には身動きがとれなくなっている、これが群衆雪崩の恐ろしさなのです。

明石花火大会歩道橋事故

日本で生じた群集雪崩による事故と言えば、明石花火大会歩道橋事故が取り上げられます。2001年(平成13年)7月21日、兵庫県明石市の、JR神戸線・朝霧駅の南にある海岸、明石市大蔵海岸で花火大会が行われていました。

この会場と最寄り駅であるJR朝霧駅は、大きな歩道橋でつながれていたのですが、駅から会場へ向かう客と、会場から駅へ向かう客が合流し大変な混雑となり、群衆雪崩と呼ばれる現象が発生し、子ども9名を含む11名が死亡、247名が負傷するという大惨事となりました。

群集雪崩は、目安として、1㎡の範囲、畳半畳分程度の空間に、人が10名以上集まる状態になると、発生の恐れが高まります。JR朝霧駅前の歩道橋で事故が生じた際には、ちょうどこの1㎡あたり10名というすさまじい人混みが生まれていました。さらに、梨泰院(イテウォン)で事故が発生した際には、1㎡辺りなんと17名もの人が存在する状態になったということですが、想像できるでしょうか。

畳半畳より少しだけ広い空間に、10名以上の大人が密集状態になる、自分の意思では文字通り指一本動かすことができず、ひとたび転倒が始まればなすがまま、大事故に発展するのは容易に想像できます。こうした事故は、人があつまる場所と状況がそろえば、日本でも世界でもどこでも生じる可能性があります。

群集雪崩を避ける

日本の場合、2001年の明石花火大会歩道橋事故以降、群集雪崩に対する知識が広まり、イベント等が行われる際には雑踏警備などが重要視されるようになりました。しかし事故から23年が経過し、この事故を知らない世代も増えてきています。梨泰院の事故は人ごとではなく、再び日本でも生じる可能性がある事故です。

また、群衆雪崩は、他の自然災害の二次災害としても発生する可能性があります。特に、いつ発生してもおかしくない首都直下地震など、大都市直下の大地震では、その二次災害として群衆雪崩の発生が想定され、対策が求められています。大地震の直後には無理をして徒歩帰宅をしないと強く呼びかけられていますが、これは群集雪崩で死ぬことを回避するのも含まれているのです。

群衆雪崩を回避する根本的な要因は、人混みにいかないという点に尽きるのですが、まったく外出しないわけにもいかないですし、イベントや人の多い場所を生涯避け続けるというのも難しいと思われます。

一方、人が集まれば必ず群衆雪崩が生じるというわけではなく、基本的に群集雪崩の災害はかなり珍しい事故です。「特定の一カ所」に、「尋常ではない人数」が集まるなど、条件がそろうことが必要です。例えば直近で行われていた衆議院議員選挙では、全国各地の駅前などで候補者演説が行われ、人混みが生まれていました。

でもあの程度の人混みだけでは、群集雪崩は生じません。具体的には、1㎡あたり10名以上、ざっくり畳半畳に大人が10人程度集まる状況が、広範囲で生じるほどの状況が必要になります。あとからあとから空間に人が流れ込み、危険を感じるような状況を避けることが重要です。

文字通り指一本動かせないレベルの、最悪の満員電車。その辺の路上において、こうした人混みに巻きこまれた場合は、群集雪崩発生のカウントダウンが生じています、可能であれば、押さず、走らず、ゆっくり、その場から離れてください。こうした状況を回避するための意識を払うことが、群衆雪崩の回避につながると言えるでしょうか。

また、大地震直後はすぐに移動や徒歩帰宅をしないということも基本ですが、そのための準備として、職場などに災害時用の防災用品を備える、家族と安否確認をするためにLINEグループなどを作成したり、乾電池スマホ充電器などを確保する、といった帰宅をしない準備も重要です。

誰もが巻きこまれる恐れのある群集雪崩、ご注意ください。

本日も、ご安全に!

本日は「梨泰院・群集雪崩」のお話でした。

それでは皆さま、引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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