Voicyそなえるらじお #949 命を守るための非合法行為「緊急避難」とは?認められる条件は?
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、10月18日(金)、本日も備えて参りましょう!
緊急避難について
本日のテーマは「緊急避難」のお話です。
今回はコメント欄にいただいたご質問への回答です。質問をくださいましたのは「杉山翔」さん…『海の近くにいる時に地震後、停電し、津波警報が発せられた時、周りに唯一高層マンションがあり、他には何も無い状況の場合、その高層マンションには物理的、法的に立ち入ることは出来るのでしょうか。ここじゃないと津波に飲まれる!死ぬ!という状況です。ご教示頂ければ幸いです。』
緊急避難とは
津波を避けるための不法侵入は是か非か、これはいわゆる「緊急避難」という法律の解釈になります。
「緊急避難」というのは、今まさに目の前に迫っている危険から、自分自身や誰かの生命を守るために、やむを得ず他人の物などに害を与えても、犯罪とは言えないという考え方です。緊急避難が認められるためには、複数の条件を満たす必要があります。
- 自分や誰かの命、財産、自由などに対する、目の前の危険を避ける行為であること。
- 他に選択肢がなくやむを得ない行為であること。
- 目の前の危険で受ける被害よりも、与える損害の方が小さいこと。
この3点がポイントになります。
例えば危険が生じる可能性を避けるための行為ではダメです。海岸などにいる際、もしこのタイミングで大地震が起きて津波が生じたら助からないから、地震が生じたわけではないが念のためのこのマンションに浸入しよう。これはダメです。まだ生じていない危険の回避は、合法的な手段である必要があります。
また他に選択肢がある場合もダメです。目の前に津波避難タワーがあるが、なんとなくマンションに逃げた方がモノとかがもらえそうだから、入らせてもらおう。この場合は危険を避けるための施設がありますから、津波避難タワーを使うべきとなります。もちろんタワーが地震で損壊しているとか、燃えているとか、そうした状況であれば話は別です。
そして、緊急避難によりより大きな被害をもたらすことは許されません。津波から逃げるために目の前の建物に避難させてもらおう。でも人がいない方が快適に避難できるので、元々の住民を皆殺しにする、これは許されません。怖い表現でごめんなさい。
こうした条件を満たす場合は、緊急避難が認められる可能性が高いと言えます。災害に巻きこまれつつある状況で、目の前に安全な場所がある場合は、やむを得ない状況です、逃げ込んでください。
ただし、その建物に物理的に入れるかどうかは別です。大地震が生じても電気が生きていればマンションのオートロックで中に入れない可能性があります。この場合、入口のドアを破壊するなどの行為は、緊急避難になるかどうか微妙な所です。
高さ10メートルの津波に襲われる状況であれば、ドアを破壊して建物に入ることも、仕方の無い状況かも知れませんが、結果として数センチ程度の津波被害だった場合は、ドアを破壊する行為による損害の方が大きくなりますので、緊急避難にならない可能性があります。
目の前に危険がある場合は躊躇無く行動するが、念のための避難であればまずは合法的な施設などを利用する、ということをお考えください。
本日も、ご安全に!
本日は「緊急避難」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!