Voicyそなえるらじお #771 被災地・避難所の「暴力・性犯罪」から自分と家族をどう守るか
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、1月23日(火)、本日も備えて参りましょう!
予言動画リメイク
本日のテーマは「災害時における暴力や性犯罪の回避」のお話です。
- 今回はコメント欄にいただいたご質問への回答。
- 質問を下さいましたのは、「サメー」さんです。
- 『質問です。被災時の性被害に関して予め対策できることはありますでしょうか?過去の事例では、互いが協力しなければ生きていけない状況で声も上げれず周りも見てみぬふりという事で、被害者はかなり辛い精神状況だっただろうと推察されます。
- 危機的状況において本能的に、男性は子孫を残そうと動き、女性は妊娠などという更に危険な状態は避けたいと恐怖心が働き、更に傷つきやすい状況に陥るのかと思います。
- 避難現場での対策しか見つけられませんでしたので、備蓄や心構えについて平時に備える方法があれば知りたいです。』
所詮この世は弱肉強食 強ければ生き弱ければ死ぬ
- 今回のお話は、私の個人的な見解です。まずは前提からですが…
- 自然界の仕組みは弱肉強食であり、力を持つものが好き放題に振る舞うのが生物の自然な姿です。サバンナの王者はライオンで、マグロはアジを自由に捕食し、シマエナガですらアブラムシを食べる際には王者の風格を纏っています。
- そして人間も、ホモ・サピエンスという動物としての本能を考えれば、自分の好きなことを好きなタイミングで行う、ケダモノの仲間です。しかし、他人を殴ったり、モノを奪ったり、性的な行為を迫ったり、自然界であれば当たり前に行われているこれらの行為は、現代社会において自由に行うことは許されていません。
- これは人間が元々持っている根源的な性質ではなく、教育と法律により与えられた後付けの要素です。
- 他人を殴ってはいけない、モノを奪ってはいけない、性的な行為を迫ってはいけない、これは人間が元々持っている本能ではなく、そういうことをしてはいけないという教育がなされた結果、私たちが身につけた理性です。この教育は、家庭におけるもの、学校におけるもの、あるいは宗教による戒律によるものなど、様々な場所で行われます。
- 元々備わっているものではないため、ふとした瞬間に理性が失われれば、他人を殴ったり、モノを奪ったり、性的な行為を迫ったりします。きっかけは人それぞれですが、誰にでもあり得ることです。
- そのため、多くの国では法律を作り、人を殴ったり、モノを奪ったり、性的な行為を迫ることを禁止しています。そしてこれを破った人間を取り締まって罰を与えるために、日本の場合は法律で暴力を許されている警察という組織があり、司法権を持つ裁判所が犯罪をおかしたものに罰を与えています。
- さて、話が長くなりましたが、大規模な災害が発生すると、平時の理性や警察・司法の力が弱まるため、人間が元々持っているケダモノとしての本能が表に出やすくなります。人を殴ったり、モノを奪ったり、性的な行為を迫ったりという行動です。
災害
- 大規模な災害が発生すると、普段はインフラや警察力により保たれている、便利で安全な生活が崩壊します。災害による恐怖と不安、被災生活によるストレス、こうした不安定な精神状態は、平時の理性を吹き飛ばし、本能による行動を行わせやすくします。
- また災害は、不特定多数の人が密集する避難所生活や、建物やインフラの破壊により、普段は目にすることのない他人のプライバシーが目に入りやすくなります。さらに警察力の低下により、ケダモノ的行動に対する罰則が与えられにくい環境も生まれます。
- その結果、人を殴ったり、モノを奪ったり、性的な行為を迫ったりという、本来は理性と社会の仕組みにより封じられている犯罪行為が生じてしまうのです。しかし、人間が動物である以上、これらの犯罪行為を根本的になくすことは出来ません。犯罪者側への働きかけは困難であるというのが対策の前提です。
自衛
- では被災地における暴力や性犯罪からどう身を守るか。
- 根本的には、被災地を離れることです。被災地の外では日常生活が続いていますので、移動する足が確保できた段階で、被災地の外にいる家族や親戚、あるいは自分でホテルなどをとって身を寄せるなどが有効です。被災地特有の災害は、被災地だけで行われます。外へ逃げてしまうのが最良です。
- 被災地を出ることが難しい場合は、できるだけ自宅で生活を継続する在宅避難を行えるように準備します。津波・洪水・土砂災害等の影響を受けない場所にある、地震で潰れない家に住むこと。そして十分な備蓄品を確保することで、自宅での生活を維持することが、犯罪者と距離を置くために有効です。
- 自宅の確保と十分な備蓄品はモノや手段を対価に性的な行為を迫る、立場による性犯罪などを回避するためにも必要な準備となります。避難所へ行くのは最後の手段であり、最初の選択肢にしてはいけないということですね。これは、犯罪の回避だけではなく、災害関連死の防止や、不便な生活を避けるためにも有効です。
- しかし、被災地の外へ行くことが難しい、あるいは自宅が被害を受けてとどまることが難しい場合は、避難所などで生活をする必要があります。この場合、犯罪者側への働きかけは難しいため、理不尽であっても自衛手段をとることが重要です。
- 最重要なことは、ひとりで行動しないこと。家族や信頼できる知人友人など、常に複数人で行動することで、突発的な犯罪から身を守る必要があります。またよからぬターゲットになってしまうことを回避するため、暗闇へ行く際にはできるだけ強力なライトで周囲を明るくする、肌の露出を極力控える服装をする、寝袋やブランケットを使う場合も、女性や子どもらしい明るい色ではなく地味な色のモノを使う、などの対応が必要です。できるだけ「目につきにくくする」対応です。
- 避難所生活をする場合も、できるだけ避難所運営に女性を参加させる、自分が女性であれば運営に参加することで、子どもや女性に優しい避難所運営を自分たちで行う意識を持つことが重要です。トイレをできるだけ明るくする、女性更衣室や授乳の部屋を設ける、単身の避難者はできるだけ男女を分けられるようにする、支援物資の配布は女性も作業に加わるようにする、などの対応をおこない、よからぬターゲットにならない環境を作ることが重要となります。
- もちろんこれらは理想論であり、特に災害直後における命を守る状況においては望めるものではありません。しかし身の安全が確保でき次第、被災地における基本的人権を守るための行動は、どんどん行わなければならないと思われます。
インフラと人権を守る
- 災害に備えて自宅を守り、備蓄品を確保するのは、インフラの途絶に備えるだけではありません。よからぬ犯罪者と距離を置くためにも重要な準備となります。避難所へ行くのは最後の手段、と考えた準備をまず行ってください。
本日も、ご安全に!
本日は「災害時における暴力や性犯罪の回避」のお話でした。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!