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Voicyそなえるらじお #675 処理水②…トリチウムの海洋放出は、そもそも「問題」なのか?

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #675 処理水②…トリチウムの海洋放出は、そもそも「問題」なのか?

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、9月7日(木)、本日も備えて参りましょう!

シリーズ処理水問題②

本日のテーマは「トリチウム排出問題」のお話です。

  • 前回に引き続き、シリーズ「処理水海洋放出」ということで、今回もトリチウムのお話をしたいと思います。

海洋放出について

  • 前回の放送で、トリチウムという物質は、なにやらすごい存在ではなく、水素の仲間であるとお話しました。厳密に言えば、この宇宙で最もありふれた物質である水素、これと化学的な特性は同じですが、少し重たいものがトリチウム・三重水素です。
  • さて、水素と同じなのだとしたら、トリチウムはなにが問題なのでしょうか。それは、トリチウムはβ線という放射線を出す物質、放射性物質であることが問題ですと、昨日の放送はここまでお話をしました。今回はこの続きです。

放射線はなにが問題なのか

  • 水素の仲間・同位体であるトリチウムは、β線を放出する放射性物質です。だから、海に放出したらまずい、海が汚染される、魚が食べられなくなる、人類は滅亡する、これが海洋放出に反対する立場の方々の意見です。
  • ところで、放射性物質というのは珍しいものではなく、その辺にたくさん存在ます。その辺の空気にも、水にも、食べ物にも、なんなら太陽からの光にも、放射線は含まれていますので、私たちは日頃から放射線をあびながら生活していると言えます。それが問題にならないのは、被曝する量が少ないからです。
  • 地球が生まれた46億年前から、地球は放射線をあびています。というより地球からも放射線が出ています。当然ながら、そこで生まれて進化してきた生命は、全て放射線をあびながら生活をしています。放射線は生命の細胞に含まれる遺伝子を傷つけます。
  • この時、放射線の量が少なければ、すぐに傷は修復されて、生命が死ぬことはありません。そうやって何十億年も進化してきました。ただ、一度に大量の放射線をあびると、細胞の修復が追いつかず、がん細胞が生まれたり、あるいは桁違いの放射線をあびると、細胞が死滅して、いわゆる急性放射線障害で即死することになります。
  • ですので、自然界にも放射性物質があり、私たちは当たり前の様に放射線をあびて生活をしている。量が少なければ問題無いが、量が多いと問題になる。これが重要なポイントです。

トリチウムはたくさんなある

  • では、トリチウムは生命にとって問題となるのでしょうか。
  • まず前提として、トリチウムは自然界にも大量に存在します。地球には毎日宇宙からの宇宙放射線が降り注いでいますが、この宇宙放射線、厳密に言うと中性子線が空気に含まれる窒素や酸素に衝突すると、トリチウムが生まれます。
  • そしてこのトリチウムは、酸素と結合して「H2O」ならぬ「HTO」となり、大気中の水蒸気、雨水、川の水、地下水、海水、あらゆるところに散らばって行きます。毎日大量のトリチウムが自然に生成されていますので、トリチウムが存在すること自体は、当たり前なのです。
  • さらに、原子力発電所を普通に運転するだけで、大量のトリチウムが生成されます。これは特に処理されず、普通に海水や河川にドバドバ流されています。毎年、宇宙放射線で生成されるトリチウムと比較して、2~3割の量が世界中の原発などからドバドバ放出されているのです。
  • また、1950年代から80年台にかけて、毎年数十回の核実験が行われて今した。その辺で花火を打ち上げる間隔で、水爆や原爆をバンバンぶっ放していた時代があった訳です。そして核爆発が起これば、放射性物質が生成されます。当然この中にはトリチウムも含まれます。
  • 現在地球上に存在するトリチウムの結構な量が、過去の核実験でばらまかれたものだったりするのです。具体的には、この瞬間に地球上に存在するトリチウムの、9割以上が過去の核実験で作られたものだったりします。ただ、核実験由来のトリチウムは減る一方ですので、いまから何百年か経てば、これ由来のトリチウムは消えてなくなります。
  • ということで、トリチウムはその辺にたくさん存在しますし、原発あるところにトリチウムの放出ありですので、海洋放出そのものについては、よほどすさまじい量でないかぎり、問題は無いと言うことになります。そして、福島第一原子力発電所事故から放出される処理水に含まれるトリチウムは、とても少ない、生命に対して何ら危険をもたらす物ではないというところがポイントになります。

トリチウムだけが含まれるなら問題は無い

  • ということで、トリチウムはその辺にもたくさん存在し、自然界でも毎日生成されている物質であるため、よほど高濃度のトリチウムと接触しない限り、問題にはならないということになります。
  • では、トリチウムの海洋放出はなにが問題なのかと言えば、特に問題はありません。真にトリチウムだけが放出されているのであれば、なにも心配することはないのです。問題があるとすれば、実はトリチウム以外の放射性物質がたくさん含まれていた場合です。
  • つまり、処理水と言いながら、実は処理できていない汚染水が海洋放出されていた場合は、問題になります。だからこそ、海洋放出そのものは問題無いのですが、トリチウム以外が含まれていないかを確認するため、リアルタイムのモニタリングが必須であり、それが行えているのであれば、海洋放出は気にしなくて大丈夫だと、前回の放送の冒頭でお話をした次第です。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「トリチウム排出問題」のお話でございました。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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