Voicyそなえるらじお #674 処理水①…そもそも「トリチウム」とは何なのか?
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、9月6日(水)、本日も備えて参りましょう!
シリーズ処理水問題①
本日のテーマは「トリチウム排出問題」のお話です。
- 2023年8月24日、福島第一原子力発電所のいわゆる「処理水」について、海洋放出が開始されました。現在タンクに収められている汚染水および処理水を、安全な状態にして全て海洋へ放出するには、数十年の期間がかかる見込となっており、先の長い課題となっています。
- 本日はこの処理水に関して、とくに「トリチウム」のお話をします。
海洋放出について
- まず、今回の海洋放出に関する私のスタンスですが、基本的には問題ないが、できれば第三者機関による継続的なモニタリングが必要だろうと思っています。
- と言いますのも、トリチウムを含む処理水そのものは安全なのですが、トリチウム以外の放射性物質が含まれていた場合は大きな問題になるため、海洋放出を続ける期間中は、放出される処理水にトリチウム以外の放射性物質が含まれていないかを確認し続ける必要があるためです。
- 政府と東京電力の発表では、現在のところトリチウム以外の放射性物質は含まれていない、厳密に言えば基準値以下であるとしていますが、特に政府は原発事故にまつわる必要な情報を隠した実績もあるため、全面的に信頼することはできません。
- そのため、定期的な第三者機関による、あるいは改善の余地がないデータの一般公開が行われ、トリチウム以外が含まれないことが明らかな状態にして、海洋放出を継続すべきだと、私は考えております。
原子について
- という前置きをした上で、トリチウムのお話です
- トリチウムは水素です、厳密に言うと水素の放射性同位体です。
- 少し物理のお話をします
- あらゆる物質は原子で構成されています。
- 例えば人間を構成する主成分はタンパク質ですが、タンパク質という物質は、炭素、水素、窒素、リン、酸素、硫黄の原子から構成されています。
- そして様々な原子は、原子は陽子と中性子で構成されています。さらに陽子と中性子もクォークという素粒子に分解できるのですが、今回のお話には関係無いため省略します。
- 原子の話に戻します。
- 例えば原子の中で一番小さくて軽い水素は、陽子を1つ含みます。
- 2番目に小さくてかるいヘリウムは、陽子を2つ含みます。
- タンパク質の材料、炭素は陽子6つ、窒素は陽子7つ、酸素は陽子を8つ持っています。他にも、例えば鉄は陽子が26個、原発の燃料になるウランは陽子を92個持っている大きな原子です。この原子が持っている陽子の数を、原子番号とよび、化学的な性質を決めています。
- ところで、原子は陽子と中性子で構成するといいましたが、陽子とセットになっている中性子の数は、じつはいくつかのパターンがあるのです。
- 例えば普通の水素は、陽子1つだけで構成されており、中性子は持ちません。
- 2番目に小さくて軽いヘリウムは、普通の場合、陽子2つと中性子2つがセットになっています。また炭素は、普通の場合は陽子6つと中性子6つがセットになっているのですが、稀に中性子が7つまたは8つある炭素が存在します。
- また原発の燃料になるウランは、陽子92個と中性子143個がセットになっているウラン235と、陽子92個と中性子146個がセットになっているウラン238が、原発の燃料などに使われています。
- このように、陽子の数は同じだが、中性子の数が異なる原子を、同位体・アイソトープと呼びます。
- そして、水素にもこの、同位体・アイソトープが存在するのです。
トリチウムについて
- 普通の水素は、陽子1個で構成されます
- そして水素にも、陽子の数は同じだが、中性の数が異なる同位体・アイソトープが存在します。
- 陽子1個・中性子1個で構成される水素は、重水素と呼ばれます
- 陽子1個・中性子2個で構成される水素は、三重水素と呼ばれます、そしてこの三重水素の別名がトリチウムなのです
- つまり、トリチウムとは、なにかすごい物質ではなく、水素の仲間なのです
- 例えるなら、パンケーキ1枚・2枚・3枚と考えてください
- どれも同じパンケーキなので、化学的な特性は同じです
- しかし枚数が異なりますので、物理的な特性は異なります
- これが同位体・アイソトープのイメージとなります
- トリチウムが問題視されるのは、トリチウムだけ放射線を出す放射性物質だからです。普通の水素と重水素は放射線を出さない安定的な物質です。トリチウムだけは、ベータ線という放射線をだします。そのため厳密には、同位体ではなく放射性同位体、アイソトープではなくラジオアイソトープと呼ばれています。
- このベータ線が、人体などに影響を与えるため、トリチウムはヤバイといわれているのです。
- 次回はもう少し掘り下げたいと思います。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「トリチウム排出問題」のお話でございました。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!