Voicyそなえるらじお #617 大地震の前ぶれとしての「地震雲」は本当にあるの?考え方と対策について
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、6月13日(火)、本日も備えて参りましょう!
個人で楽しむ分には自由です
本日のテーマは「地震雲」のお話です。
- 少し強めの地震が相次いだりしますと、地震に関する情報などがメディアでもよく登場しますが、この際の定番ネタのひとつに「宏観(こうかん)異常現象」や「地震雲」という物があります。
- 地震雲が出ていたので、大きな地震に注意。そうした情報はSNS等でもよく見かけますが、地震雲なるものは本当にあるのでしょうか。
気象庁の見解
- 地震雲に関する見解としては、気象庁のホームページに掲載されているQ&Aのテキストが大変分かりやすいため、まずはこちらをご紹介したいと思います。
雲は大気の現象であり、地震は大地の現象で、両者は全く別の現象です。大気は地形の影響を受けますが、地震の影響を受ける科学的なメカニズムは説明できていません。「地震雲」が無いと言いきるのは難しいですが、仮に「地震雲」があるとしても、「地震雲」とはどのような雲で、地震とどのような関係で現れるのか、科学的な説明がなされていない状態です。
日本における震度1以上を観測した地震(以下、有感地震)数は、概ね年間2,000回程度あり、平均すれば日本で一日あたり5回程度の有感地震が発生していることとなります。震度4以上を観測した地震についても、最近10年間の平均(2011年と2016年を除く※)では、年間50回程度発生しています。このように地震はいつもどこかで発生している現象です。
雲は上空の気流や太陽光などにより珍しい形や色に見える場合がありますし、夜間は正確な形状を確認することができません。形の変わった雲と地震の発生は、一定頻度で発生する全く関連のない二つの現象が、見かけ上そのように結びつけられることがあるという程度のことであり、現時点では科学的な扱いは出来ていません。
- ということで、国の見解としては明確に「通称・地震雲」というものは存在しないという立場になっていますが、私個人的にも同じような考えを持っています。
- また雲と言えばこの方、Voicyパーソナリティでもある雲研究者・荒木健太郎さんも次の様な言葉を残しています。
- 『大きな地震が起こると、「地震雲」が話題になります。しかし巷で地震雲と呼ばれる雲は全て気象学で説明できるため、地下からの影響は見分けられません。地震が不安ならば備えを進めて、雲は愛でましょう』
- ということで、このコメントには私も完全に同意です。
数時間おきに地震が生じる日本
- 「通称・地震雲」と呼ばれている特徴的な雲、あるいは印象に残る気象現象の後に、地震は生じるのか生じないのか。地震の大きさを指定しなければ、多くの場合で、「通称・地震雲」が生じた後に地震は起きると思います。
- なぜならば、日本は地震の多い国であり、平均すれば毎年約2,000回、1日辺り6回ほど、震度1以上を観測する地震が生じています。マグニチュード5以上の、かなり大きめな地震に絞っても、日本では毎年平均90回ほど、4日に1度は大きめの地震が生じる国なのです。
- であれば、「通称・地震雲」を見かけた後、数日から1週間以内に、何かしらの地震、あるいはM5以上の少し大きめな地震が生じるのは、当たり前だと言えます。これだけ多くの地震が生じる地域ですから、たまたま「通称・地震雲」と「地震」が重なるのは、当然だと言える訳です。
地震雲の後に「大地震」は生じるのか?
- しかし、小さな地震の前兆を捉えて、なんの意味もありません。
- 重要なことは、被害が出るような大地震を、事前に察知することであり、この前兆現象として「通称・地震雲」が活用できるならば、それは素晴らしいことだと言えます。しかし、現実的には無関係だと言わざるを得ません。
- 過去の大地震を振り返った際、地震発生の直前から数日前に、特徴的な雲が出現したり、印象に残る気象現象が生じることは何度も報告されていますが、重要なのはその逆なのです。
- 「通称・地震雲」が発生したあと、必ず大地震が生じるということであれば、地震雲の観測に予算を青天井で投じるべきです。しかし現実的には、「通称・地震雲」が生じても、そのほとんど全てにおいて、その後大地震は生じません。
- どこからを大地震とするかにもよりますが、日本の場合はM6以上の揺れになると被害が生じ始めます。しかしさすがにこの大きさの地震となると数は少なく、平均すれば月に1.5回程度のペースになります。
- 恐らくですが、「通称・地震雲」を見たという報告なり、SNSにおけるつぶやきは、月に1.5回以上あるでしょう。なんなら毎日どこかでそのような雲が生じているかもしれません。
- 「通称・地震雲」が大地震の前兆現象であるならば、雲の観測回数と大地震の発生回数は、おおむね同じになるはずです。しかし実際には、「通称・地震雲」に関する発見報告の方が多いはずです。
- であれば、「通称・地震雲」と「大地震」の関係は、現在のところ科学的に証明されておらず、「たまたま」「偶然」であると言わざるを得ず、あるいは大地震の後の後付けにすぎず、私自身はそのように考えております。
- 地震雲が不安だなと思う場合には、自宅の地震対策の見直しなり、今揺れたらどういう行動を取るかというイメージトレーニングをするのがよい対策ではないでしょうか。地震に関する「不安」を解消する方法は、「対策」をするしかありません、備えましょう。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「地震雲」のお話でございました。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!