Voicyそなえるらじお #187 火災だけではない、揺れ・津波・土砂災害も甚大だった関東大震災
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、9月2日(木)、本日も備えて参りましょう!
関東大震災の翌日
本日のテーマは「関東大震災」です。
- 昨日9月1日は防災の日でしたが、まもなく100年目を迎える関東大震災が発生した日でもあります。本日はこの地震について少し触れて参りたいと思います。
- 今から98年前、1923年(大正12年)の9月1日、お昼直前の11時58分、神奈川県沖の相模湾と想定される場所を震源とする、マグニチュード7.9の巨大地震が発生しました、関東大震災の発生です。
- 明治、近代化以降の首都園を直撃した唯一の巨大地震で、文字通り首都を壊滅的な被害に追い込んだ、歴史に残る大震災です。
- ちなみに厳密に言うと、マグニチュード7.9の巨大地震の名前が、関東地震または大正関東地震と呼ばれ、この地震により引き起こされた一連の災害は、関東大震災と呼ばれます。
- 東北地方太平洋沖地震と東日本大震災、
- 兵庫県南部地震と阪神・淡路大震災、
- の関係と同じですね。
関東大震災の死者
- 関東大震災では、10万5千名を超える膨大な死亡者が発生しました。
- ひとつの災害で発生した死亡者数は、戦争と感染症パンデミックを除けば、明治以降、現在も最大規模の被害となります。
- なお、戦争と感染症パンデミックを除くと言ったのは、太平洋戦争では死者300万人以上、1918年からの新型インフルエンザパンデミックでは38万から45万ほどの犠牲者が出ているためです。
- それにしても、当時の日本の人口は5千万人ほど、その時代に10万5千名の死者が発生する震災というのは、想像もできないほどの大惨事だったということになります。
色々な数字
- 関東大震災では、特に火災による死亡者が多く発生しました。
- 全体の死者10万5千名のうち、9割近い9万2千名もの方が、火災により命を落とされています。
- 近い将来の発生が想定されている、現代の首都直下地震においても、最大の死因は火災と考えられていますので、首都の弱点は100年前から変わっていないということになります。
- また、火災による死亡者数があまりにも多いため隠れがちですが、
- 関東大震災では、地震の揺れによる死亡者が1万1千名、土砂災害による死亡者が700から800名、津波による死亡者が200から300名と想定されています。
- 津波による犠牲者数は、2011年の3.11東日本大震災によるものが圧倒的ですが、建物倒壊、や土砂災害による死亡者数は、現在まで関東大震災を超える物はなく、火災以外でもすさまじい被害が発生していました。
- マグニチュード8クラスの巨大地震が都市部の近くで発生すると、とにかく考えられる、ありとあらゆる災害が全部生じて、メチャクチャな状況になるのだということがよく分かります。
建物を潰してはいけない
- これだけ大きな災害となりますと、後の世の中へ残す教訓も膨大なものになります。その中でも特に重要なことが、建物の耐震化です。
- 関東大震災が発生した大正12年当時は、まだ法律による耐震基準が明確には定められていませんでした。
- 一部の建物は、自主的な対策で耐震化がなされていましたが、ほとんどの住宅や工場などは、総じて耐震性に乏しい建物だったと言えます。
- その結果、強い揺れに襲われた地域では、その地域に存在するほぼ全ての建物が倒壊し、直接的には1万1千名という膨大な圧死者を生じさせることになりました。
- 木造の平屋などであれば、まだ生き埋めになっても救助される可能性がありますが、レンガ作りや粗末なコンクリート造りの建物が倒壊すると、多くの方が助からずに圧死してしまうからです。
- さらに、建物が倒壊すると、室内で火災が発生した際の初期消火ができず、大規模な火災に発展しやすくなりますし、つぶれた木造住宅はほとんど薪の束状態となりますので、火災が延焼する原因にもなります。
- また建物が倒壊して閉じ込められてしまうと、火災や津波から避難することができなくなり、実際、関東大震災でも火災・津波の犠牲者のうち、少なくない方が、生き埋め状態で焼死あるいは溺死されるという、最も厳しい亡くなり方をしていると考えられています。
- これを裏付けるデータとして、東京や横浜における火災の状況を見た際、建物の倒壊率と、火災や津波による死亡率は、ほとんど一致しているほか、
- 東京よりも震源にちかかった横浜では、より建物の倒壊率が高くなっていますが、こちらの方が東京に比べて、火災の出火密度が高いと言うことも分かっています。
- 建物はつぶれると人を潰し、また火災を招く、ということで、とにかく都市部での震災を防ぐためには、建物を潰さない対策が重要だと言うことになります。
そして建築基準補へ
- 実際、関東大震災の翌年、1924年(大正13年)には、日本ではじめて建物の耐震基準が定められた法律が制定され、現在の建築基準法の耐震基準の原型となっています。
- 建築基準法に定められている耐震基準は、その後も大きな地震などが発生するたびに改正され、直近では1981年6月1日と、2000年6月1日に改正された基準が、最新の耐震基準として各種の目安になっています。
- 建物を潰さないということは、個人が家庭で行う防災対策においても重要なことです。ご自宅がいわゆる「旧耐震基準」、1981年6月1日よりも前に、建築確認申請という認可を受けて建てられている場合は、
- 大地震の直撃を受けた際に、建物が倒壊する可能性があります。この場合は引越か、耐震リフォームか、建替が必要です。地震対策の基本は建物対策、これは100年前も現在も変わりません、まずはここを、確認してください。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「関東大震災」のお話でございました。
1923年の関東大震災は、マグニチュード8クラス、海で起こるタイプの固有地震で、ここ1000年ほどを見ると、おおむね200年間隔で発生しています。まもなく100周年、ということは、あと100年ほどは、このタイプの巨大地震が起こる可能性は低いと言えますが、逆に言えば100年後には、あの関東大震災が、再現される可能性があるということです。
関東大震災から100年たち、当時よりも建物は頑丈になりました。しかし、未だに首都直下地震の被害で最大の物は、火災と想定されています。建物はつぶれづらくなりましたが、100年前以上に、密集し、多くの建物が建ち、ガソリン自動車をはじめとする危険物の数も増大しています。
海で起こるタイプの関東大震災はしばらくこない可能性が高いですが、陸で起こるタイプの首都直下地震は、明日、あるいは今、この瞬間に緊急地震速報がなってもおかしくありません。地震の揺れによる圧死と、火災による焼死を防ぐために、自宅の耐震化、家具の固定を確認いただき、身の安全確保と、素早い避難の動線確保を、行うようにしてください。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!