Voicyそなえるらじお #198 昭和三大台風と、平成・令和の三大台風を決めるなら?
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、9月17日(金)、本日も備えて参りましょう!
三大台風
本日のテーマは「過去の顕著な台風」のお話です。
伊勢湾台風
- 今週の放送では、台風被害や暴風対策などのお話を続けて参りましたが、本日はシリーズ台風対策の最終回…というわけではありませんが、過去の台風被害に関するお話です。
- 過去の台風被害を語る際、必ず引き合いに出されるのは、まずなんと言っても1959年(昭和34年)の伊勢湾台風です。死者・行方不明者5,098名というあまりにも甚大な人的被害はもちろん、住宅に与えた被害、浸水した建物の数など、その被害の規模が飛び抜けて大きいものになっています。
- また、この甚大な被害を二度と繰り返してはならない、という決意の元、日本の防災対策に強く影響を与えたという点も重要で、
- 日本の防災行政の根幹となっている災害対策基本法を制定するきっかけになっていたり、
- 9月1日の防災の日を定めるきっかけになっていたり、
- 富士山山頂にレーダーを建設することのきっかけになっていたりと、
- 過去の放送でもご紹介して参りましたが、近代日本の防災対策を大きく推進させることになったのが、この伊勢湾台風による被害でした。
昭和3大台風
- また、伊勢湾台風以外にも、昭和時代には台風による大きな被害が発生しています。
- その中でも死者・行方不明者が3千名を超えるような、甚大な影響をもたらした台風がふたつあります。
- ひとつは室戸台風、1934年(昭和9年)9月21日に高知県室戸岬に上陸し、近畿地方を中心に甚大な被害をもたらし、3,036名にも及ぶ死者・行方不明者を生じさせました。
- 室戸台風は日本本土に上陸した台風の中では、上陸時の気圧が観測史上最も低い台風で、この時に観測された60メートルを超える最大瞬間風速は、長らく建築基準法の風に耐える基準値として使われてきました。
- そしてもうひとつの顕著な台風は枕崎台風、昨日ご紹介した台風、終戦の1ヶ月後に日本を直撃、1945年(昭和20年)の9月17日に鹿児島県枕崎に上陸し、西日本、特に原爆被害を受けた直後であった広島県を中心に、死者・行方不明者3,756名という被害を生じさせました。
- 枕崎台風も室戸台風同様、非常に勢力の強い台風でしたが、とにかく上陸した時期が最悪で、ある意味では戦争との複合災害という体をなした台風であったとも言えます。
- 昭和時代は、その他にも死者千名を超えるような大きな台風被害が多く発生していますが、その中でも、伊勢湾台風、枕崎台風、室戸台風は、とりわけ大きな被害を出した台風と言うことで、昭和三大台風とまとめられています。
令和元年東日本台風
- では、昭和三大台風に対して、平成以降の台風被害で顕著だったもの、あるいは令和・平成三大台風を定めるとしたら、どれが該当するのでしょうか。
- 日本では、伊勢湾台風以降、死者が100名を超えるような台風はほとんど発生していませんでいた。これは、伊勢湾台風を契機とした防災対策や気象観測網の整備が大きく進んだという側面も大きいと言えます。
- 平成以降の台風で、死者が100名を超えたのは、2019年の令和元年東日本台風が唯一です。平成三大台風と呼ぼうと思ったら、もう令和になっていた、台風による被害は昔の話とは限らないのですね。
- 令和元年東日本台風は、2019年10月12日に、静岡県の伊豆半島に上陸し、東日本の広い地域に大雨を降らせ、同時に140箇所の堤防が決壊するなど、大きな被害が発生しました。
- 平成以降の三大台風を決めるとしたら、現時点ではこの令和元年東日本台風が筆頭になるのではないか、と個人的には思います。
近年の顕著な台風
- では、平成・令和三大台風、他に入れるとしたらどの台風が該当するでしょうか。これはなかなか難しく、基準を何にするかで変わってきます。台風の強さなのか、大きさなのか、あるいは人的被害の規模なのか、建物被害の規模なのか、浸水した家屋の数か、面積か、または社会的に影響を与えた物なのか、色々な尺度があります。
- 例えば令和元年東日本台風の直前に発生した、令和元年房総半島は、千葉県を中心とする甚大な暴風被害が特徴ですが、気象庁に命名されるくらいすごい台風、という意味合いではこの台風が該当します。
- また直近では、2018年(平成30年)の台風21号、近畿地方を直撃し、高潮により関西国際空港が水没したり、強風による多くの停電が生じたりと、インフラ被害が特に大きな台風で、風水害による損害保険金額が、令和元年東日本台風を超えて歴代一位であるなど、物に対する被害がとにかく大きかった台風でした。
- その他にもインパクトの強い台風は色々ありますが、個人的に平成・令和三大台風を決めるとしたら、ひとつは「平成3年台風第19号…通称りんご台風」、もうひとつは「平成16年台風23号…通称トカゲ台風」ではないかと思います。
- ここは専門家の方によって大きく見解が分かれるところですので、私なりの考えです。
平成・令和3大台風
- 平成3年台風第19号、通称リンゴ台風は、1991年9月27日に、長崎県佐世保に上陸し、その後日本海に出て北海道へ再上陸した台風ですが、極めて強い勢力のまま上陸し、さらに速い速度で日本海を北上する進路を取ったため、全国的に暴風被害が相次ぎました。
- 特に、青森県では収穫直前を迎えていたリンゴが大量に落下し、甚大な農業被害をもたらし、その後果樹園に防風ネットが普及するきっかけにもなっています。
- 死者・行方不明者は62名、風水害による保険金の支払額も、歴代3位と甚大な影響をもたらした、平成初期の台風でした。
- そしてもうひとつ、平成16年台風23号、通称トカゲ台風は、2004年10月20日、高知県土佐清水市に上陸しました。台風が上陸する時期が歴代でもかなり遅かったことが特徴で、その後太平洋沿岸を舐めるように進み、全国で大雨による被害をもたらしました。
- 死者・行方不明者は98名、これは当時としては平成最悪の被害であり、また3日後の10月23日には、新潟県中越地震が発生して大きな被害をもたらすなど、2004年は大きな災害が相次ぐ年でした。そのため、2004年の「今年の漢字」には「災」という文字が選ばれているほどです。
- ちなみに、なぜこの台風がトカゲ台風なのかと言えば、アジアで発生する台風は、2000年以降、アジア各国が提案する様々な名称をつけることになっていまして、140個の台風命名リストが準備され、これが適応されています。
- 日本からは星座名に由来する名称がリストに加えられていますが、日本が提案した名前の台風が、初めて日本に上陸したのが、この平成16年台風23号で、そのときの名前が「トカゲ」だったのです。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「昭和と平成・令和の三大台風」のお話でした。
昭和の三大台風、伊勢湾台風、枕崎台風、室戸台風はともかく、平成・令和は現在進行系です。今後どのような被害をもたらす台風が来るのか、不安な所はありますが、台風は大地震と異なり事前に避難が可能です。人的被害をゼロにできるはずですので、ハザードマップの確認、素早い避難の判断、など心がけて頂きたいとおもいます。
来週は連休となります、次回の放送は、9月21日火曜日、第199回目の放送となります。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!