Voicyそなえるらじお #119『火口からはるか離れた場所を飲み込む、融雪型火山泥流』
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、5月24日(月)、本日も備えて参りましょう!
融雪型火山泥流
本日のテーマは、「火山の噴火」のお話です。
- 本日5月23日は、北海道十勝岳が噴火を起こした日です。
- 95年前の本日、1926年(大正15年)5月24日、お昼過ぎの12時11分、北海道の中央に位置する十勝岳が噴火を起こしました。
- この噴火では、144名の死者・行方不明者が生じる大惨事となりましたが、これは直近100年で最大の噴火被害で、
- 1888年(明治21年)に発生した福島県・磐梯山による噴火の死亡者461名に次ぐ被害の記録となっています。
- ちなみに明治以降の近代における噴火被害では、
- 1988年の福島県・磐梯山噴火による犠牲者が461名と最も多く、
- 2番目は、1926年の北海道・十勝岳噴火による犠牲者が144名と続き、
- 3番目は、1902年に発生した伊豆諸島・鳥島の噴火で冬眠125名全員が死亡する大惨事となった噴火が、近代の被害が大きかった噴火記録として残されています。
1926年5月24日 北海道・十勝岳噴火
- 多くの犠牲者を出した十勝岳の噴火ですが、死者はほぼ全員が、土石流によるものです。
- 1926年5月24日、お昼を回った正午12時11分、十勝岳が、まず1回目の噴火を起こしました。
- 十勝岳の5月と言えば、まだ雪が残る時期です。
- そのため、噴火の影響で周囲の雪が融け、これが土石流となり、麓の温泉街に襲いかかりました。
- さらに4時間後、夕方の16時17分過ぎ、さらに大きな爆発が生じました。
- この2回目の噴火でも再び、周囲の雪が融けて生じる土石流が発生し、当時硫黄の採掘に従事していた作業員の事務所を襲い、多くの犠牲者が発生しました。
- この、雪が残る山で噴火が発生し、瞬間的に大量の雪解け水が発生し、土砂を巻きこみながら土石流となって沢を下る現象は、融雪型火山泥流と呼ばれていますが、
- 十勝岳噴火では、まさにこの融雪型火山泥流により、144名という多くの犠牲者を出すことになりました。
融雪型火山泥流
- 十勝岳噴火で生じた融雪型火山泥流は、噴火が生じてからわずか25分程度で、河口から二十五キロ離れた集落を襲い、避難するまもなく多くの方々が犠牲となりました。
- 火山の噴火による被害は、噴火の規模によって大きく変わりますが、十勝岳の噴火は、規模で言えばそれほど大きなものではありませんでした。
- もし噴火の時期が雪のない季節であれば、犠牲者はほとんど発生していなかった可能性もあり、雪が残る時期の噴火には、噴石や火砕流といった火口周辺に被害をもたらす現象だけでなく、遠方に対する土石流被害にも注意が必要だという教訓を残すことになりました。
例えば富士山や浅間山の場合
- 融雪型火山泥流は雪深い北海道だけの話ではありません。
- 例えば関東に近い火山としては、富士山と浅間山が挙げられますが、いずれも夏場以外は雪が積もっている火山です。
- そのため、積雪時期に噴火が発生した場合には、融雪型火山泥流が発生する可能性があり、ハザードマップなどにも避難地域が示されています。
- 富士山はここ300年ほど噴火をしていないため、具体的な観測データが残されていませんが、浅間山は頻繁に噴火を起こしています。
- 実際、1973年と、1982年の浅間山噴火時においても、融雪型火山泥流が発生し、73年の噴火では河口から二キロの距離まで、82年の噴火では河口から3.5キロ距離まで泥流が到達しています。
- 最新の浅間山噴火ハザードマップでも、噴火後、10数分から30分程度で、麓の街を土石流が襲う可能性が記されており、火山が噴火した際には、近くにいなかったとしても注意が必要だということを、覚えておく必要があります。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「北海道・十勝岳噴火」のお話でした。
- 融雪型火山泥流は、噴火の規模が小さくとも大規模に発生する可能性があります。河川などに近づいてはいけない状況は、大雨の時だけではないということを、ぜひ知っておいてください。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!