Voicyそなえるらじお #96『震災関連死を防ぐための、在宅避難と防災備蓄』
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、4月15日(木)、本日も備えて参りましょう!
2016年熊本地震・関連死について
本日のテーマも引き続き、「2016年熊本地震」です。
昨日、#95 の放送では、熊本地震による被害の実態として、多数の余震や家屋倒壊による被害についてお話をいたしました。本日は熊本地震で亡くなられた方々の死因で最も多かった、「災害関連死」についてお話をします。
- 「災害関連死」とは、災害で直接命を落とすのではなく、災害によるショックで亡くなったり、避難生活でのストレスや疲労が原因で体調を崩して命を落としたり、避難所で持病が悪化して死亡するなど、災害の二次的な影響で死亡する状況の総称を言います。
- 特に、大地震は災害の規模が大きくなりがちで、また復旧にも時間がかかるため関連死被害が生じやすく、震災を原因とする災害関連死については、「震災関連死」という言葉で区別することもあります。
- 2016年の熊本地震では、全体の死者272名の8割に当たる、217名の方が、この震災関連死で命を落とされています。
熊本地震における震災関連死
- 熊本地震で生じた震災関連死の例としましては…
- 地震のショックと余震への恐怖が原因で、急性心筋梗塞となり亡くなられた、83歳の女性。
- 地震後の疲労で心不全となり亡くなられた、78歳の男性。
- 地震による栄養障害および持病の悪化で亡くなられた、88歳の男性。
- 避難中の車中泊による疲労で心疾患を患い亡くなられた、74歳の女性。
- 慣れない避難所生活で肺炎状態となり、入院先の病院で死亡された83歳の女性。
- いわゆるエコノミークラス症候群の疑いで亡くなられた、43歳の女性。
- 地震による疲労が原因と思われる交通事故で亡くなられた、32歳の男性。
- など、地震によるショック、体調不良や栄養不足による持病の悪化、疲労やストレスを原因とする不慮の事故の発生など、多岐にわたっています。
- 全体的な統計データを見ますと…
- 「地震のショックや恐怖による肉体的・精神的負担」で亡くなられた方が全体の4割
- 「避難所生活などによる肉体的・精神的負担」で亡くなられた方が全体の3割、
- 「医療機関の機能停止になどによる初期治療の遅れ」で亡くなられた方が1割、
- さらに、「被災後のストレスによる自殺」で命を落とされた方も、1割弱に登っています。
- 初期治療の遅れは、大規模災害発生時にはやむを得ない面もありますが、命が助かった後の生活で、肉体的・身体的な負担とストレスを緩和することは、災害関連死を防ぐ上で重要なポイントと言えます。
災害関連死を防止する対策
このような状況を受けて、再発防止に関する対策を、行政レベルでも、また私達個人レベルでも講じていきたい所ですが、どのような対策を取ることができるでしょうか。
- 最もよい対策は、被災地を出ること。
- もし遠方に、頼ることができる親戚・知人・会社などがあり、学校や職場の制約を受けずに行動ができるのであれば、被災地の外へ疎開するのが最良。
- 日本人的な考え方ですと、「わが家だけ申し訳ない」「復旧に手を貸さないのは悪い気がする」と思いがちですが、被災地から支援対象者が1名減れば、それだけ他の方に支援を回せますので、特に高齢世帯など、身軽で、はっきり言えば復旧の作業者よりも、支援を受ける側に回る方々は、疎開してしまうのがベストです。
- とはいえ全ての方が疎開するのは難しい。
- この場合、特に問題となるのは、避難所における厳しい環境での生活です。
- であれば次に考えたいのは、「避難所に行かないための準備」です。
- 避難所に行くことで問題が生じるのであれば、避難所に行かなければ良い。
- ということになりますので、いわゆる「在宅避難」の準備を徹底することが重要です。
- 地震で潰れない家に住み、家具の固定、家電の移動防止、荷物の落下対策、ガラスの飛散防止などの対策を行い、室内の安全確保をした上で、ライフラインの停止に備えた、防災備蓄の準備をキチンと行うことが、災害関連死を防ぐ、命を守る準備になります。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「熊本地震による震災関連死」のお話でした。防災備蓄は重要ですが、「お腹がすいたら困るから」という理由だけでなく、避難所に行かずに在宅避難をすることで、災害関連死を防ぐ、死なないための対策としても重要です。建物・室内の安全対策の確認と合わせて、自宅が無事だった場合に、自宅に留まることができるかどうか、ぜひ備蓄品の中身をご確認ください。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!