Voicyそなえるらじお #258 スプレー缶は小さなカセットガスボンベ、危険物扱いをしよう
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、12月16日(木)、本日も備えて参りましょう!
制汗スプレーの主成分は可燃性ガス
本日のテーマは「スプレー缶の爆発事故」です。
12月16日は、過去に色々な災害が生じている日
国内の自然災害としては…
- 1707年(宝永4年)12月16日に発生した富士山の噴火。
- 1988年(昭和63年)12月16日、北海道、大雪山・十勝岳の噴火。
国外の自然災害としては…
- バルディビア地震→1575年に南米・チリ南部のバルディビア沖で生じたM8.8の巨大地震。
- ニューマドリッド地震→1811年にアメリカ・ミズーリ州で生じたM7.5前後の地震が6時間の間をあけて2回連続発生した地震。
人災としては…
- 1932年(昭和7年)12月16日、東京日本橋にあったデパート「白木屋」で大規模な建物火災が発生。
- 2018年(平成30年)12月16日、北海道、札幌市で大規模なガス爆発事故が発生。
など、噴火・火災・ガス爆発と、ドカンと行く災害が集中しているのが、12月16日という日付でございます。本日はこの中でも、スプレー缶によるガス爆発の注意についてお話したいと思います。
札幌不動産仲介店舗ガス爆発事故
- 3年前の本日、2018年(平成30年)12月16日、北海道札幌市でガス爆発事故が発生しました。
- この事故は、札幌市にあった不動産仲介会社の店舗で、不要となった除菌消臭スプレーを廃棄するため、店舗内で中身を噴射して捨て続けるという作業が行われていた中で生じた、ガス爆発事故です。
- スプレー缶に含まれていた可燃性のガス、ジメチルエーテルが閉めきられた店舗内に充満し、給湯器を着けた瞬間に引火・爆発しました。
- この事故により、不動産仲介店舗が入居していた雑居ビルが倒壊、周辺の建物20棟・車両26台が被害を受け、50名以上の負傷者が発生しました。
- このような、スプレー缶による爆発事故は度々発生しておりますが、かなり身近に活用しているアイテムの中にも、こうした危険物は多く、取り扱いには注意が必要なのです。
スプレー缶の中身は可燃性ガスが主成分
- 皆様のご自宅や職場に、色々なスプレー缶があろうかと思います。
- 殺虫スプレー、トイレの消臭スプレー、体を冷やす冷感スプレー、汗を抑える制汗スプレー、髪の毛を整えるスタイリング用のヘアスプレー、DIYなどで使う潤滑油スプレー、塗料スプレー、防水スプレー、掃除用の洗剤を吹き付けるスプレーなど、すこし見渡すだけでもたくさんのスプレー缶がありますね。
- こうした、鉄の缶に入っている、ボタンを押すとプシューと噴き出すスプレーは、通称「エアゾールスプレー」と呼ばれていますが、基本的に取り扱い注意のものです。
- エアゾールスプレー缶の中には、主成分と、中身をプシューと噴き出させるための、加圧ガスが入っています。
- この加圧ガスの多くは、可燃性のガスです。具体的には、LPG・プロパンや、DME・ジメチルエーテルなどが液体の状態で詰められ、プシューとすると一緒に噴き出しています。
- プロパンやジメチルエーテルは可燃性の燃料ですので、当然ながら炎に向けてプシューとすると、激しく燃えます。ご自宅のガス器具がプロパン契約の場合は、あれと同じ物がスプレー缶に入っています。またカセットコンロやストーブに使う、カセットガスボンベ、あの主成分もほぼ同じものになります。
- つまり、制汗スプレーなどを体に吹き付ける時、制汗剤の成分とあわせて、プロパンガスを自分に向けて浴びせているということになるのです。こう考えると、ちょっと怖くないでしょうか。
いろいろあるスプレー缶の事故
- 実際、例えば自動車などの狭い空間に向けて、冷却スプレーや消臭スプレーをプシューとやり、直後にタバコに火を付けた場合などは、ドカンと爆発しますし、
- 部屋の中にGをはじめとする虫が出現した際、ストーブなどに向けて殺虫剤を拭きかけると当然ながら爆発的に燃え上がりますし(Gも死ぬでしょうが)、
- コンロ用のスプレー洗剤を、火が付いているガスコンロに吹きかければ、やはり爆発的に燃え上がり汚れと一緒にコンロも燃えて無くなります。
- また、ファンヒーターなどの前にスプレー缶をおいたままにすると加熱して缶が破裂、中身が噴き出して爆発することもありますし、こうした事故は大小様々に発生しています。
なぜ可燃性のガスを使うのか
- では、エアゾール缶、各種スプレーの加圧ガスとして、なぜこのような可燃性のガスを使うのでしょうか。
- それは、これらのガスが、人間に対して無毒で、スプレーに圧力を加えるのにちょうど良い性質で、なんといっても安いからです。毎日ガスコンロや給湯器でガンガン燃やせるほどに安い、その上無害、ということでスプレー缶に使われています。
- 実は昔は、スプレー缶の加圧ガスとして、フロンガスが使われていました。フロンガスは自然界に存在しない物質で人間が作り出したガスですが、人体に無害で、不燃性であり、とても便利な物質だったのです。
- が、ご存じの通り、オゾン層を破壊することが判明してからは、世界中から撤廃され、その後のスプレー缶にはプロパンやジメチルエーテルが使われるようになっています。
- スプレー缶は、カセットガスボンベと同じ物だと認識して、ぜひ炎や高熱を避け、換気の良い場所で使用するなど、安全にご使用ください。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「スプレー缶の爆発事故」のお話でございました。
ところで、スプレー缶の中身がプロパンだとして、一方で制汗剤などを自分に吹き付けても、あのプロパンガスの嫌な臭いがしないけれど、なぜかな、と疑問に思われるかもしれませんが、
もともとプロパンをはじめとするLPGは、無味無臭です。あのタマネギが腐ったような嫌な臭いは、ガス漏れに気づけるように、あとから人工的に着けています。そのため、スプレー缶にプロパンが詰まっていても、それ自体は臭いません。それだけに注意が必要だということですね。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!