BCP・事業継続計画の内容と具体的な構成要素
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執筆者:高荷智也
BCPを構成する要素は様々ですが、大きくは非常時に使うための対応マニュアルと、BCPを保守運用するための資料に分けられます。各ドキュメントの具体的な内容、使用するタイミング、策定にあたってのポイントについて解説をします。
BCP・事業継続計画を構成する資料について
BCPを構成するドキュメントは多種類に渡る
BCPの目的は「非常時における事業の継続」ですが、その内容としては緊急時に用いるためのマニュアルだけでなく、防災対策や防災備蓄の管理資料、演習や訓練の計画資料、連絡先や備品の一覧などを更新するための運用資料、またBCPの内容そのものを見直すための構築資料など、様々な関連ドキュメントにより構成されています。またISO23001を取得している場合は監査を行うための資料なども加わります。
最も重要なものは非常事態に用いるための資料
しかしBCPの構成要素を大きく分ければ、「①非常時に用いるための資料及びそのための事前準備資料」と「②BCPを保守・運営するための資料」に大別されます。もちろん、BCPが必要となる非常事態の際に使われるものは前者ですが、非常時にBCPを機能させるためには普段からの保守・運用が不可欠であるため、後者の資料はオマケではなくBCPの維持に欠かせないものであると言えます。
① BCP本体・非常時対応マニュアルとその付属資料
非常時対応マニュアル
BCPのドキュメントに欠かせないものが「非常時対応マニュアル」です。内容としては、発災直後の人命救助、安否確認、情報収集、被害状況の確認、対策本部設置など、自然災害なり人為的な事故・不祥事が生じた場合の初動対応をまとめたものになります。この非常時要のマニュアルについては、BCPの対象となる事業が何であってもさほど変わるものではありませんので、企業の危機対応力を高めるために単独で作成してもよいものです。
仮復旧マニュアル
発災直後の対応を非常時対応マニュアルでまかなったら、次に必要になるものが「仮復旧マニュアル」です。内容としては、代替機器の稼働、非常用電源の準備、主担当者以外による業務実施、取引先への連絡など、目の前の混乱を収拾させた次の段階の各手順、業務の仮復旧内容をまとめたものになります。このマニュアルに盛り込む内容は、BCPの対象とする事業毎に異なりますので、個別に計画をする必要があります。
本体の付属資料
非常時対応マニュアル・仮復旧マニュアル共に、非常時に用いるためには関連資料が必要となります。安否確認や取引先への連絡をするための緊急連絡先一覧、水や食料を配付するための備蓄品リスト、バックアップ設備を稼働させるための取扱説明書などを初め、定期的に内容を確認して最新状態を維持しなくてはならない資料が存在します。こうしたドキュメントは本体資料と共に保管をしますが、運用による見直しが不可欠です。
BCP本体の管理について
非常時対応マニュアル・仮復旧マニュアルは緊急時に用いる資料ですので、紙に印刷をしてすぐ取り出せるようにしておく必要があります。非常時は停電をしていたり、PCなどのIT機器が使えなかったりする可能性がありますので、作成した非常時要のマニュアルがパソコンでしか閲覧できないという状況は割ける必要があるためです。マニュアルと書き込み用の様式を印刷し、ファイルに閉じて複数保管しておくとよいでしょう。
② 保守・運用の資料について
スキル訓練・BCP演習の計画資料
非常時にBCPを機能させるためには平時からの訓練や演習が欠かせません。訓練については、従業員に対して救命救急のスキルを身につけさせたり、消火訓練や避難訓練を実施したり、代替用設備の動作確認訓練をしたりすることが必要です。また半年から一年に一回程度の頻度で、BCPの机上演習や非常対策本部のシミュレーション演習を実施して、いざ本番を向かえた際の不備などを洗い出し、改善していくことが望まれます。
中核事業の見直し・BCPの再設定資料
BCPを新規策定する際にはBIA(事業影響度分析)を実施して、自社のどの事業を優先的に守るのかという検討を行い、中核事業を定めます。しかしこの中核事業は自社の状況や事業戦略によって変化するものですので、定期的にBIAの再実施を行い、守るべき事業が現在最も重要なものであるかどうかを確認しなくてはなりません。そのため、BIAを実施した際の資料は保管し、見直し時に使えるようにしておく必要があります。