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企業や会社における従業員の安否確認

最終更新日:

執筆者:高荷智也

企業が自社の従業員の安否確認体制を整えるには、どのようなことをすればよいのでしょうか?事業継続計画(BCP)の初期対応で重要な安否確認について、ご紹介します。

企業や会社における従業員の安否確認

従業員の安否確認は、複数の連絡手段を併用する

企業や法人が事業継続計画(BCP)を策定する際、災害直後の初動対応において最も重要な項目が安否確認です。事業の仮復旧をおこなうにしても、従業員の安否状況が把握できていなければ人員の配置すらままならないため、迅速かつ正確な安否確認が必要となります。

安否確認システムを導入する、もしくは連絡網による安否確認の仕組みを構築する際には、複数の通信手段を併用することが重要です。2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)では、安否確認の多くに携帯メールと電話が用いられていましたが、大規模な通信障害によりそのいずれもが長期間利用できなくなり、安否確認が正常に機能しないケースが多数生じました。

災害に強い通信手段はインターネットです。東日本大震災でも、個人間の安否確認の手段としてインターネットは有効に働きました。具体的には、Twitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)などのソーシャルメディアや、skype(スカイプ)やLINE(ライン)といったのインターネット回線を用いた連絡ツールの利用が考えられます。

また、NTTが提供する災害用伝言ダイヤル171や、携帯キャリアの災害用伝言板を用いて、社員やメンバーが自分の電話番号に安否情報を登録し、それを安否確認の担当者が個別に集約する方法もあります。さらに、デジタル機器が利用できない事態も想定し、最低限の連絡先を紙やカードの形にして携帯させることも有効です。

安否確認は、複数の端末・複数の担当者で運用する

大規模な災害が深夜や休日に生じた際、安否確認の担当者自身も被災者となるため、出社には時間がかかります。また停電が生じた場合、モバイル以外の端末は利用が難しくなります。そのため、安否状況を確認するための端末が、会社のデスクトップPCに限定されるという状況は避けるべきといえます。

そこで、安否確認システムを導入する場合は、端末を選ばずに利用できるシステムにすることが重要です。インターネットのブラウザでアクセスできるタイプであったり、クラウド型のサービスを利用することなどが考えられます。

また、安否状況の登録と閲覧の両方を、モバイルPC・スマートフォン・携帯電話など複数の端末で行えるようにしておくことも有効です。安否確認を行う担当者も1名の選任をおくのではなく、できれば自宅の方角をバラバラにした上で、事前に複数名の体制にしておくか、だれでも安否状況の確認ができるような仕組みにしておくことが望ましくあります。

安否確認は、普段から利用の訓練をしておく

安否確認システムを導入した場合はもちろん、インターネットや災害伝言ダイヤルを併用する場合も、定期的にこれらを使用させて使い方を周知させたり、携帯メールアドレスの変更を察知できる仕組みを作っておくことが重要です。可能であれば、日常の業務連絡に安否確認システムを用いることができると、大変効率的に周知と訓練を行うことができます。

具体的には、安否確認システムであればメールを配信して返信を受ける、ソーシャルメディアであれば各自が書き込みを行い担当者がそれを確認する、また災害用伝言ダイヤル171は毎月1日と15日に体験利用ができるので、実際に録音をしてもらい担当が確認をするなど、利用を通じて使用方法に慣れさせることが重要です。

企業によってはコンプライアンスやセキュリティ上の問題もありますが、例えばfacebook(フェイスブック)やGoogle+(グーグルプラス)などのソーシャルメディアのグループ機能を、普段から部署やオフィス、会社全体の連絡手段や掲示板代わりに利用することができれば、緊急時にも慌てずに用いることができます。

また当然ながら単に安否の確認を行うだけでは、業務の仮復旧の計画は立てられません。単にシステムの使い方を訓練しておくだけでなく、安否確認の際にどのような情報を得て、それをどのように集計・活用するかという計画を立てておき、繰り返し演習を行うことで、実際に事業継続計画(BCP)として機能する安否確認の仕組みが構築できます。

従業員の家族の安否確認体制も整える必要がある

東日本大震災では多くの帰宅困難者が発生して問題になりました。そこで東京都の場合は、2013年4月から「東京都帰宅困難者対策条例」を施行し、事業者に対し従業員を3日間事業所に留まらせること、そのための備蓄を行うことなどを努力義務としました。

食料品と水の備蓄は、年に1回、防災意識の向上もかね、入れ替えのために従業員に配布するとよいでしょう。この際、配布した備蓄食料を実際に食べさせ、食べやすさや味に関するアンケートを行うことができれば、非常時のストレス緩和に役立つ美味しい備蓄食料を行うことができます。

しかし、企業が備蓄品の整備などを進めても、従業員が自分の家族の安否確認を行えない場合、交通機関が止まっていても無理をして帰宅する傾向が強まります。これは東日本大震災で実際に見られた結果です。

災害直後の無理な帰宅は二次災害を招く恐れがあるため、特に事業の仮復旧に必要な人材を中心に、3日間は職場に留まらせることを考えるべきですが、そのためには家族の安否確認を行うための仕組みが重要となります。安否確認システムや連絡網は、従業員の家族の安否確認を行うことも前提にしておくことが望ましくあります。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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