BCP・事業継続計画と防災対策の違い
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執筆者:高荷智也
目的の違い
防災対策は被害の軽減を目的にする
防災対策は、防災の対象とした「モノ」が想定する災害に襲われた際に、被害を出さないか被害を減らすことを目的としています。そのため、防災対策の対象外となっている建物や設備が被災した場合は当然被害が生じますし、また想定よりも災害の規模が大きかったり、想定外の災害が発生した場合も被害が出ることになります。
BCPは事業の継続を目的にする
一方BCPでは、あらかじめ定めた「事業」が不特定の災害やリスクに見舞われた際に、個々の「モノ」に被害が出たとしても事業そのものは維持されることを目的としています。防災対策と異なり対象となる災害を特定せず、想定外を含めた不特定のリスクに備える必要がありますので、防災対策が失敗することも前提に計画を立てます。
対策を行う拠点の違い
防災対策は拠点・設備単位で実施
防災対策は原則として拠点や設備の単位で取り組みます。最初に取り組むべきは、オフィスの防災、店舗の防災、工場の防災という具合に、各事業所単位で主に人命を守るための防災対策を講じることです。次いで、製造機械、設備、什器などの重要物がある場合はそれらを守るための対策を実施します。
BCPは事業単位で実施
一方BCPが守る対象は「事業」ですので、対象となる事業が複数の事業所で行われていたり、本社・支店など複数の地域で展開されていたりする場合は、複数拠点に対する防災対策と防災が失敗した場合の計画が必要になります。また逆に言えば、同じ事業所内に対象となる事業に関係するモノとしないモノが存在することになりますので、この際にはBCPの対象となるモノを優先的に守ることになります。
守るべき経営資源の違い
防災対策は自社の経営資源が対象
防災対策を実施する際には、通常対象物に対して物理的な対策を講じることになりますので、対象とするモノ(経営資源)は自社内にあることが前提となります。自社が保有している建物や車両、事業所内にある設備や什器、またそこで働く従業員、無形の情報資産などを、想定した災害から守ることが具体的な内容です。
BCPは社内外全ての経営資源が対象
一方BCPが守る対象である「事業」行うたには、社内のモノ(経営資源)だけでなく、取引先やインフラなど社外のモノが不可欠ですので、こうした社外経営資源もBCPで守るべき対象となります。具体的には、仕入れ先や取引先、外注サービスや流通網、電気や水道などのライフラインですが、これらを自社が守ることは物理的に困難ですので、「守る」のではなく「代替・再調達」するための計画をBCPで定めることになります。
想定リスクの違い
防災対策は自然災害を中心に備える
防災対策を実施する際には、原則として対象とする災害毎に異なる内容の対策を講じます。地震対策であれば建物の補強や機械の固定をしたり、洪水対策であれば設備の高層階移動や土のうの準備をしたり、津波対策であれば素早い避難のために非常持ち出し袋を用意したりといった具合です。備えるべき対象が分からなければ手の施しようがないのが、防災対策の特徴であると言えます。
BCPは事故や不祥事等を含めた想定外全般に備える
一方BCPでは、守るべき事業にとって望ましくない事象は全て対象となりますので、自然災害だけではなくテロによる人為的な事故、重要な取引先の倒産、自社を原因とする不祥事など、想定外となる出来事も含めた「ありとあらゆるリスク」に備える必要があります。そのため、特定の災害を想定するのではなく、災害が発生して防災対策が機能しなかったことを前提に、設備の代替計画や再調達の準備を行うことになります。